受信箱を更新しても、海外の工場から返事は来なかった。国内の購入者からは、二通目の連絡が来ている。商品を輸入して販売していた美咲は、二つの画面を交互に開いた。商品を注文したときには、どちらもこんなに重たい窓ではなかった。

事故の状況はまだ調査中だ。しかし購入者は、今後の対応を知りたいと言っている。工場へは写真も説明も送った。発注前にはすぐ返ってきた担当者から、今回は何日も連絡がない。「作った会社へ聞いているので」と説明したところで、相手の不安まで止められるわけではなかった。

人物と事故は架空です。実際の責任や費用負担は、製品、事故、契約などによって異なります。国内の購入者に対する問題と、海外の取引先へ費用負担を求める問題は、同じ一件に見えても別の道を通るという話です。

返事を待つ先と、返事をしなければならない相手

美咲が知りたかったのは、工場が不具合を認めるかどうかだった。そこが決まれば、自分も答えられると思っていた。しかし、原因の調査に時間がかかるとしても、購入者へ何も知らせなくてよい理由にはならない。

今確認している内容、まだ分かっていないこと、次にいつ連絡するか。確定できない部分を確定したように説明せず、店として分かる範囲を整理して案内する必要がある。商品の安全に関わる場合は、対応の優先順位も考えたい。

輸入者など、製造物責任法で対象となる立場に当たるかは、実際の取引で確認する。工場が責任を負うと言っていたから、自分は国内の請求と無関係になる、と単純に整理できるわけではない。

反対に、購入者から連絡が来た段階で、すべての原因や請求額が確定したわけでもない。事実の確認と、必要な連絡を進めること。美咲がすぐ決めるべきなのは、相手がすべて正しいか、工場がすべて悪いかという二択ではなかった。

「品質保証します」の一文は、どこまで使える約束か

美咲は、発注前のメールを探した。担当者は「品質を保証します」と書いていた。心強い言葉だが、不良品の交換を意味するのか、事故による損害の負担まで意味するのか、具体的な条件はなかった。

商品代を返す、代替品を送る、検査に協力する、回収にかかる費用を負担する。対応にはいくつもの段階がある。契約で何を約束していたかを確認しないと、同じ保証という言葉でも、相手と期待している範囲が違う可能性がある。

また、誰が契約の相手なのかも重要だ。普段やり取りしている担当者、請求書を出す会社、製造をする工場、代金を受け取る会社が別なら、その関係を把握する必要がある。写真で見た工場が、そのまま契約上の請求先とは限らない。

美咲が保存していたのは、チャットの名前と商品の画像ばかりだった。相手の正式な会社名や所在地を確認する作業を、忙しさを理由に後回しにしていた。仕入れるときには小さく見えた空欄が、困ったときには一番大きな空欄になる。

説明する資料は、売れた証拠だけでは足りない

工場へ連絡するときも、単に「お客さんが怒っています」だけでは、何が起きたか伝わらない。どの注文で仕入れた、どの仕様の製品なのか。事故の状況や損害、確認できた情報は何かを整理する必要がある。

商品を特定する表示、納品の時期、販売の記録、写真、購入者とのやり取りなどが対応につながる。原因調査に必要な製品をどう保全するかも、適切な相談先へ確認したい。急いで送り返したり、処分したりすると、後で確認しにくくなることもある。

相手が使う言語へ説明を整える時間もかかる。事故の専門的な内容を、販売ページを訳すときと同じ感覚で処理してよいとは限らない。伝わらなかったから返事がないのか、調査しているのか、対応を拒んでいるのかも、区別して考える必要がある。

美咲は、売上の記録だけならすぐに出せた。何個売っていくらになったかは、毎週確認していたからだ。それに対して、どの納品分を誰へ届けたかをまとめる作業には時間がかかった。記録は、儲かったことを数える以外にも使う。

海外へ請求できることと、実際に回収できること

契約上は費用負担を求められるとしても、相手がすぐ応じるとは限らない。会社が存続し、資金があり、交渉へ対応するか。請求の根拠があっても、現実に支払ってもらえるまでには別の問題がある。

紛争になるなら、契約の準拠法や裁判管轄、仲裁などの定めを含め、適切な専門家へ確認する必要がある。国や契約によって手続きは違い、翻訳、専門家の費用、時間などがかかる可能性もある。国内で商品を売るときの手続きと同じ感覚では進まないことがある。

ここで「裁判になれば必ず勝つ」「海外企業は訴えられない」と断定することはできない。実際の証拠と契約、相手の状況を踏まえて、対応の選択肢と見込みを検討する話になる。

美咲は、請求書を一枚送れば終わると思っていた。ところが、その請求を誰がどう確認し、どの手続きで支払うかが分からない。販売価格と仕入れ価格の差に、国境をまたぐ交渉の仕事は見込んでいなかった。

工場への交渉が終わるまで、ほかの仕事は休めない

事故への連絡や必要な調査を進めている間にも、通常の購入者から注文や質問が来る。ほかの商品も扱っていれば、その対応もある。一人の店ほど、事故対応の時間が日常業務へ直接響く。

同じ不具合の可能性がある製品については、販売を続けるか、安全のためどんな対応をするかを検討する必要がある。状況に応じて報告や回収に関する制度も確認したい。工場からの返信を待つことと、その間に自分が何を判断するかは分ける必要がある。

資金面でも、先に必要な支出があり、工場との費用精算は後になる場合がある。保険を検討していても、対象や補償、手続きは契約によって違う。何でも埋めてくれる前提で現金の余裕を使い切らないほうがよい。

美咲は、「仕入れ先が対応してくれる」という期待を、事業の予備資金の代わりにしていた。期待は大切だが、問い合わせに答える人にも、先に払うお金にも変わってくれない。困る前に役割を決める意味が、ようやく分かった。

担当者が変わった場合に備え、会社の正式な連絡先へ記録を引き継げる状態かも確認したい。仲のよい担当者一人との関係だけで進めていると、その人が不在になったときに説明を最初からやり直すことになる。日々の親切さと、問題が起きても続く連絡体制は、両方が必要だ。

次の仕入れで聞くことが、少し変わった

値段、数量、出荷予定。美咲の質問は、これまでその三つが中心だった。次は、製品の情報と確認できる資料、問題発生時の連絡、調査への協力、契約上の負担まで確認することにした。

相手がすべての条件に応じるとは限らない。その場合は、自分が何を引き受けるかを理解して、扱うかどうか決める必要がある。安く買えることだけを理由に、理解できない役割を全部引き受けないことが大切だ。

輸入者の立場は作ったのは海外の工場という説明で、損害の範囲は利益五百円の商品事故で、購入者へ情報を届ける仕事は完売後の回収対応で分けて確認できる。納品前に代金を払ったのに届かない問題は、仕入れ詐欺と前払いリスクで扱う別の話だ。

物販以外の事業を比べる場合は、物販とオンラインの副業の違いも参考になる。どの事業でも確認する責任はあるが、相手との契約や必要な対応は同じではない。何が自分に管理できる仕事かを見て選びたい。

美咲は、受信箱の更新をいったんやめた。記録を整理し、相談先へ連絡し、購入者へ次の案内を送る。工場の返事を待つだけでは進まない仕事がある。海外から買って国内へ売るという短い説明の中に、自分がつなぐべき連絡は、思ったより多く含まれていたのである。

確認資料:JETRO・輸入品の製造物責任者、製造物責任法、経済産業省・リコールハンドブック。国際紛争の個別の解決見込みを示すものではありません。

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