「うちは作っていません」。購入者から商品の事故について連絡を受けたとき、大橋さんは最初にそう答えかけた。作ったのは海外の工場だ。自分は見つけて、輸入して、日本のお客さんへ売っただけ。少なくとも本人の中では、その「だけ」で仕事の責任も小さくなるはずだった。

ところが、商品を国内で販売するために輸入する立場には、製造した人とは別に確認すべき責任がある。工場を持っていないことは、商品事故への責任を持たないことと同じではない。仕入れ値を見たときは小さかった荷物が、事故の連絡を受けると急に大きく感じられた。

人物と事故の状況は架空です。特定の製品や裁判の再現ではありません。法律の概要を扱う記事であり、実際の責任は取引の実態や事故の事情などによって変わります。

「仕入れて送るだけ」の中に、輸入が入っていた

大橋さんは、ネットで見つけた家庭用品を、販売するため継続的に仕入れていた。海外の会社へ注文し、日本へ取り寄せて自分の店で販売する。商品の説明では「海外の便利グッズ」と書いていたが、自分の役割を考えるときには、いつも「小売」の一言で終えていた。

製造物責任法では、製造や加工だけでなく、業として製造物を輸入する者も、責任を問われる対象に含まれる。国内で買った商品を単に小売する場合とは、自分の立場が違うことがある。

ただし、輸入にはさまざまな形態があり、名目的な輸入や代行などの実態によって検討が変わる。荷物の伝票に名前があるだけで、すべてのケースの結論が決まると考えるのも正確ではない。誰が何のために、どんな取引をしているかを見る必要がある。

大橋さんに必要だったのは、「副業」「小規模」「販売だけ」という自分の呼び方ではなく、実際に行っている仕事の確認だった。売上が少ないことや、工場へ一度も行ったことがないことだけで、輸入販売の立場が消えるわけではない。

事故があれば、必ず自動的に賠償する法律でもない

ここで大橋さんは、逆方向にも驚いた。「じゃあ、何か起きたら全部自分が払うのか」。そう単純に決まる話ではない。事故があったという知らせだけで、欠陥や責任、損害の範囲まで確定したわけではないからだ。

製造物責任を考えるには、製品の欠陥、損害、その間の関係などを確認する。使われ方や事故の経過も含め、事実を調べる必要がある。お客さんから請求が来たことと、その請求額をすべて負担することは同じではない。

一方で、製造時の自分の不注意が証明されなければ何も問われない、という理解も違う。製造物責任法は、製品の欠陥に着目した責任を定めている。自分が一個ずつ手を加えていないことだけを理由に、確認の必要がなくなるわけではない。

大橋さんは、最初の返事を「うちではありません」で終わらせるのをやめた。けがの有無や製品の情報、事故が起きた状況を確認し、関係する記録を保存する。感情的な否定と、その場での全面的な約束の間に、事実を確かめる仕事があった。

工場の説明と、日本で販売するときの確認は別

仕入れ先のページには、「品質に自信があります」と書かれていた。大橋さんは、その言葉を安全性の確認の代わりにしていた。しかし、一般的な宣伝文だけでは、どんな試験をし、どの条件で使えるかは分からない。

用途、材質、仕様、注意表示、説明書、検査に関する情報など、製品ごとに必要な確認は違う。海外で売られているから、日本でも同じ表示や条件で問題なく販売できると決めつけないことも大切だ。法令上の規制や基準の確認が必要な商品もある。

また、同じ商品名でも、納品の時期や工場によって仕様が変わる場合がある。最初のサンプルがよかったことと、以後の全商品が同じであることは別だ。誰から、いつ、どの仕様を何個仕入れたかが分かる記録は、販売後の確認にも役立つ。

大橋さんは、それまで商品の色や見た目ばかり質問していた。写真に写りにくい仕様や注意点は、面倒なので後回しだった。商品事故の可能性は、写真のきれいさに比例して小さくなるわけではない。販売ページを作る前に、聞く順番を変える必要があった。

海外の工場へ頼めば、国内の対応が止まるわけではない

大橋さんは工場へ連絡した。工場からは「状況を調べます」と返ってきた。それ自体は必要なやり取りだが、返事を待っている間にも、国内では購入者からの問い合わせが続く。

被害を受けた人との関係で誰が責任を負うかという問題と、取引先同士で最終的に誰が費用を負担するかという問題は、分けて考える必要がある。工場との契約に補償の話があっても、それだけで国内の購入者への対応が不要になるわけではない。

契約上、工場へ費用の負担を求められるとしても、必要な事実や書類をそろえて説明し、実際に支払いを受けられるかはさらに別の問題だ。相手の国や契約条件によって、交渉や紛争の解決にも手間がかかる可能性がある。

大橋さんは、「工場が責任を持つと言っています」という一言で安心していた。ところが、何の費用を、どういう条件で、いつ負担するかまでは決まっていなかった。強そうな言葉を一つもらうことと、使える取引条件を残すことは違っていた。

売る前に用意するのは、返品の住所だけではない

事故の連絡をどこで受け、誰が確認し、どの記録を見れば同じ商品を探せるか。大きな会社ほど立派な体制が必要、という話だけではない。一人の店でも、問い合わせが来てから全注文を手作業で思い出す状態は避けたい。

商品によっては事故の報告や回収などの制度にも関わる。対象や義務は製品と事実関係で違うため、一般論のまま判断せず、行政の案内や専門家への確認につなげる必要がある。販売を続けてよいかの判断も、仕入れ先の楽観的な返事だけに預けないほうがよい。

保険を検討する場合も、入っていれば何でも払われるという理解はしない。対象となる事業や製品、事故、補償の範囲、免責などは契約次第だ。商品を選んだ後に、どこまで対応できるか初めて調べるより、扱う前に確認したい。

こうした仕事の時間や費用をゼロにして、仕入れ代と売値だけを比較すると、見かけの利益が大きくなる。大橋さんが扱っていたのは、安い商品であって、責任まで割引された商品ではなかった。

国名より、自分が何を扱い、何を引き受けるか

中国製だから危険、海外品だから必ず事故がある、という話ではない。国内製品にも事故はあり、輸入品にも適切に管理される物はある。見るべきなのは、具体的な製品と取引の条件、そして自分の確認と対応の仕組みだ。

少ない仕入れ資金で始められることが、事故への対応も小さく済むことを意味しない。扱う商品を選ぶときには、使用場面や起き得る問題を考え、自分が説明し管理できる範囲かを見たい。

損害の広がりについては利益五百円の商品事故は返金で終わる?へ、ブランド名を付ける立場は自分のロゴと商品の責任へ、記録と回収対応は完売した商品が回収対象になったらへ進める。

在庫を仕入れない事業を比較するなら、自分の商品を持たない副業も参考になる。商品紹介にも広告や説明の責任はあるため、別の方法を選べば何も確認しなくてよい、という意味ではない。

大橋さんは、次の仕入れ候補を見る前に、契約と商品情報の確認を始めた。「作っていません」という説明だけでは、買う人の不安は解消しない。自分は何を確認して届ける店なのか。その問いに答えるところから、輸入して売る商売を考え直したのである。

確認資料:製造物責任法、消費者庁・製造物責任法Q&A、JETRO・輸入品の製造物責任者。

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