口座に十三万円が入った。初めてまとまった商品を売り終えた晃は、週末に少し奮発した。家族との外食、後回しにしていた買い物。商売を始めてよかったと思える時間だった。
月曜日、同じ商品をまた注文しようとして、晃は止まった。必要な仕入れ代は十万円。ところが口座に残るのは五万円だ。商品は売れた。利益も残る計算だった。それなのに、同じ商売をもう一回するためのお金が半分になっていた。
人物、商品、金額は架空です。販売代金が入ったとき、その中には、最初に商品へ使った資金の回収分も含まれます。入金の全額を、生活に使える新しい儲けだと思わないための話です。
十三万円の入金には、最初の十万円が戻っていた
晃は、最初に十万円で商品を仕入れた。その商品全体を十五万円で販売し、販売手数料や配送などに合計二万円を負担したとする。単純に差し引くと、現金として十三万円が残る。
十三万円は、ゼロから生まれた利益ではない。最初に使った十万円が戻り、その上に三万円残った形だ。ここには、ほかの固定費や税などをまだ入れていない。
| 架空の一巡 | 金額 |
|---|---|
| 最初の商品代 | 10万円 |
| 販売額 | 15万円 |
| 手数料・配送など | 2万円 |
| 売り終えた後の現金 | 13万円 |
| 同じ量の補充に残す資金 | 10万円 |
| ここまでの差額 | 3万円 |
同じ量を同じ条件で仕入れ直すなら、十万円を商品へ戻す必要がある。十三万円全部を自分の報酬として眺めれば、その部分が消える。売れたことで、商売を回す資金もいったん現金の姿へ戻ってきただけだった。
晃は、商品がなくなったので資金の役割も終わったと思っていた。だが、継続するなら、空になった棚をもう一度埋める仕事がある。棚が空くことは、財布を全部軽くしてよい合図ではなかった。
八万円使えば、補充できる量も変わる
晃が十三万円から八万円を生活などへ回すと、残りは五万円になる。元の十万円の商品を同じ量だけ補充するには、五万円不足する。
残りの五万円で半分だけ仕入れる方法はあるが、同じ売上と残りを期待できるかは数量に応じて見直す必要がある。仕入れ先に最低数量があるなら、そもそも半分で注文できるとも限らない。
別の口座から五万円を追加すれば補える。しかし、そのお金を入れたことを記録しないと、事業が自分で回っているように見えて、実は家計から補い続ける状態になる可能性がある。
晃は、赤字だから困っているわけではなかった。入金と利益を混ぜ、次の仕入れへ必要な元の資金まで使ったことが原因だった。利益の計算を何度やり直しても、使った八万円は戻らなかった。
入金を確認した日と、使ってよい額を決める日
販売代金が来ると安心する。その前に支払っていた商品代を思い出すより、増えた残高を見つめたくなる。しかし、入金通知は、生活費へ全額移してよいという許可証ではない。
次の仕入れだけでなく、まだ払っていない事業の費用、税など、必要な支出が残ることもある。返金などへの対応も、商品や条件に合わせて考えたい。
生活へ回す金額を決めるなら、これらの予定と、維持したい事業の規模を確認する。会社と個人事業では本人へのお金の渡し方や会計の扱いも違うため、実際の処理は適切な方法を確かめる必要がある。
晃は、口座に入った日が報酬の日だと思っていた。これからは、必要な支払いと補充を確認してから、自分へ回す額を決めることにした。入金通知を見てうれしくなることは、その後でもできる。
商品を増やさなくても、回す資金は必要になる
資金が要るのは、事業を大きくするときだけではない。同じ販売を繰り返す場合にも、商品を先に用意し、売って代金を受け取るまで資金を使う。
一巡ごとに全部の入金を使えば、次はまた最初の資金を外から用意することになる。販売が成功しても、継続するための準備が毎回やり直しになるのだ。
逆に、必要な資金を残して同じ仕組みを回せるなら、毎回の追加資金を減らせる可能性がある。そのためにも、商品の数量、支払い、入金の流れを把握したい。
入金と支払日の時差はカードの引き落としが怖い物販で扱う。本記事の例は、代金を受け取った後に何へ使ったかの問題だ。どちらもお金が足りなくなるが、対策を考える入口は違う。
三万円残ることと、三万円全部使えること
今回の三万円は、説明に入れた費用を引いた後の途中の残りだ。ほかの事業費や税、必要な備えがあるなら、そこから考える。個人の自由な支出へ移せる額まで計算したわけではない。
また、一回の販売がよくても、次が同じ価格や数量で売れるかは未確認の場合がある。見込んだ入金が変わったときにも、必要な支払いへ対応できる余裕を考えたい。
残ったお金を全部事業へ入れ続ければよいとも限らない。生活を支える目的の副業なら、どの程度を報酬として得たいかも大切だ。そのために必要な売上と費用、資金の規模を理解して選ぶ必要がある。
晃は、手元の現金だけを見て何となく使うことをやめた。事業に残す分と生活へ回す分を、自分の目的に合わせて考える。数字を分けるのは節約を強いられるためではなく、商売を続けるためだった。
仕入れを増やす前に、補充まで一巡を数える
商品を買い、売り、入金され、次を買える状態へ戻る。この一巡までを見れば、初回の入金だけを成果として切り取るより、必要な資金が分かりやすい。
仕入れ条件が変わると、同じ数量を補う費用も変わる。次は値上げされる、最低数量が増えるなどの場合は、その条件で計画を更新する必要がある。最初の一回の見積もりを、いつまでも使い回さないことが大切だ。
補充の安定は売れる商品を仕入れ続けられるかで、成長したときの資金は売上を倍にするとお金が足りないで扱う。現状を続ける計画と、大きくする計画は分けて考えたい。
売上と利益の基本は、費用を引いて記録する考え方も参考になる。お金の移動を記録すれば、何が回収され、何を使い、どこから追加したかを追いやすくなる。
実際には、全部が一度に売れるとは限らない。同じ架空例で半分だけ売れたなら、売上七万五千円、対応する商品代五万円、手数料や配送を半分の一万円とした場合、ここまでの差額は一万五千円だ。現金は六万五千円戻っていても、その全額が増えたお金ではない。残りの商品と、回収した資金を分けて見る必要がある。
売れた分を少しずつ補充するなら、その都度必要な資金も考える。まだ売れていない在庫があることだけで、次の仕入れ代が用意できるわけではない。数量とお金の両方を追うと、店が動いている感じと、実際に回せる状態の違いが分かりやすくなる。
生活へ回す額を決める際も、一番売れた日の入金だけでなく、一定の期間の費用と補充を確認したい。月によって残りが変わるなら、その変動を知ったうえで自分の取り分を考える。毎回の残高へ気分で名前を付けるより、何に必要なお金かをそろえて見るほうが続けやすい。
荷物のない方法と比べるときも、費用を忘れない
商品を持たない方法には、物販と同じ補充代を必要としない事業もある。自分の商品を持たない副業や、アフィリエイトの仕組みを比較することはできる。
その場合も、記事制作や集客、更新、外注などを継続する費用があるなら確認したい。荷物がないことを、入金を全部使えることと同じには考えない。どんな仕事を続けるために何を残すか、という問いは共通している。
晃は、もう一度商品を注文する前に、家計から補う額と今後の支払いを整理した。外食をしたこと全部が悪かったわけではない。使ってよい金額を、入金額だけで決めたことが問題だったのだ。
売れたお金はうれしい。でも、その中には次の商品を連れてくる役目のお金もいる。全員を週末のごほうびへ招待せず、仕事へ戻る分は残しておく。物販の商売は、売れた後のその仕分けまでで一巡なのである。
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