仕様を並べても、読者は自分に必要かを判断できません。必要なのは、その数値や機能が、どんな場面で何を可能にするのかへの置き換えです。メリットが思いつかないのは、仕様のまま考えているからです。
この記事では、仕様を場面に変換する手順を扱います。レビュー記事の全体構成や、評価の付け方は別の記事の範囲です。ここでは、説明の変換だけを練習します。
1.なぜ仕様のままでは伝わらないのか
仕様は、作る側の言葉です。数値、規格、機能の名称。これらは、比較のためには便利ですが、使う場面を想像させません。
読者は、自分の状況で役に立つかを知りたいと思っています。数値だけを見せられても、自分の状況に当てはめられません。
したがって、変換が必要です。この変換が、紹介する側の仕事になります。
2.変換の基本形
「この仕様があるので、こういう場面で、こうできる」という形にします。三つの要素を順に並べます。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 仕様 | 商品の数値や機能 | 重さが軽い |
| 場面 | 使う状況 | 持ち運んで使う場面 |
| できること | 読者にとっての結果 | 移動先でも同じ作業ができる |
三つ目まで書いて、初めて読者は自分に必要かを判断できます。二つ目で止まると、まだ抽象的です。
3.サイズの変換
寸法や重さの数値は、そのままでは実感できません。何と比べて、どういう場面で効くのかに置き換えます。
前:「本体の重さは◯◯グラムです。」
後:「本体の重さは◯◯グラムで、持ち運ぶ場面でも負担になりにくい範囲です。一方、置いて使う前提なら、この差は判断に影響しません。」
数値は残したまま、場面を添えました。数値だけを見せるより、判断に使えます。
4.機能の変換
機能の名称は、その名称を知らない読者には伝わりません。何ができるようになるかに置き換えます。
前:「自動保存機能を搭載しています。」
後:「作業の途中で画面が閉じても、それまでの内容が残ります。長い文章を書く場合、書き直しの手間を減らせます。ただし、保存される間隔があるため、直前の数分は失われる可能性があります。」
機能の名称だけでなく、何が可能になるかと、その限界まで書きました。
5.提供範囲の変換
サービスの場合、含まれる範囲が仕様にあたります。どこまで自分でやるのかに置き換えます。
前:「基本プランには設定代行が含まれます。」
後:「初期の設定を依頼できるため、自分で操作を覚える時間を省けます。ただし、運用が始まった後の変更は自分で行うことになります。継続して変更が発生する場合、操作を覚えておく必要があります。」
含まれる範囲と、含まれない範囲を両方書くと、読者は判断できます。
6.変換の練習手順
仕様から場面へ変換する手順
- 公式ページから、仕様を五つ書き出す。
- 各仕様について、それがない場合に何が起きるかを考える。
- その不便が発生する場面を具体的に書く。
- その仕様があることで、場面がどう変わるかを書く。
- 変わらない場合もあるなら、その条件を書く。
- 五つのうち、読者に関係しそうなものを二つか三つに絞る。
二つ目が変換の鍵です。「ない場合に何が起きるか」を考えると、その仕様の意味が見えます。
7.変換できない仕様
すべての仕様が場面に変換できるわけではありません。内部的な仕組みや、他と差がない項目は、変換しても意味がありません。
変換できない仕様は、書かないという判断もあります。全部を並べると、重要な項目が埋もれます。
ただし、比較のために必要な項目は、表に入れておきます。本文では説明せず、表で示す形です。
8.読者を想定する
同じ仕様でも、読者によって意味が変わります。持ち運ぶ人には軽さが効きますが、据え置きで使う人には関係ありません。
したがって、誰に向けた説明かを決めてから変換します。想定する読者が決まっていないと、全部が重要に見えます。
記事の冒頭で読者を示しておくと、変換の基準も決まります。
9.数値を残す
場面に変換するときも、元の数値は残します。数値を消して「軽い」とだけ書くと、比較ができません。
読者の中には、数値で判断したい人もいます。両方を示しておけば、どちらの読者にも対応できます。
また、数値は確認した日を添えます。仕様が変わることもあるためです。
10.誇張しない
変換の過程で、実際以上に良く見せてしまうことがあります。「軽い」「速い」といった形容を足すと、比較の対象がないまま評価になります。
比較する場合は、何と比べたかを書きます。「同じ価格帯の三つの中では」といった範囲を示します。
売り込みにならない書き方については、営業が苦手でもアフィリエイトはできる?売り込みと情報提供の違いで詳しく解説しています。
11.向かない場面も書く
変換の作業をすると、向かない場面も見えてきます。これも書いておきます。
「持ち運ぶなら効くが、据え置きなら関係ない」という書き方は、読者を絞ります。該当しない読者は離れますが、該当する読者には確実に伝わります。
向かない条件の書き方については、紹介する商品のデメリットはどう書く?向かない条件を具体的に伝えるで詳しく解説しています。
12.使っていない商品の場合
使っていない商品でも、仕様の変換はできます。公式の情報から、何が可能になるかを整理する作業です。
ただし、使ったかのような感想は書けません。「操作が快適」といった記述は、使っていないと書けません。
書けるのは、仕様から論理的に導ける範囲です。「この機能があるため、この作業が不要になります」といった形です。
13.変換の質を上げる
変換の質は、その商品が使われる場面をどれだけ知っているかで決まります。場面を知らないと、抽象的な変換しかできません。
場面を知るには、実際に使う、使っている人の話を読む、公式の想定用途を確認する、といった方法があります。
この作業を省くと、どこかで見た説明の焼き直しになります。差が出るのは、ここです。
14.表と本文の使い分け
仕様の一覧は表に、変換した説明は本文に置きます。表で比較でき、本文で意味が分かる形です。
表に変換後の説明を詰め込むと、表が読みにくくなります。表は事実、本文は解釈、という分担にします。
15.確認すること
- 仕様を、場面とできることに変換した。
- 元の数値を残している。
- 想定する読者を決めている。
- 向かない場面も書いている。
- 比較する場合、比べた範囲を示している。
- 使っていない商品について、使ったように書いていない。
六つを確認すれば、仕様の羅列にも、根拠のない推奨にもなりません。
16.思いつかないときの対処
変換が思いつかない場合、その商品について知らないことが多い状態です。公式の情報をもう一度読み、想定用途を確認します。
それでも思いつかない場合、その商品が自分の読者に合っていない可能性があります。無理に紹介せず、別の商品を探すという判断もあります。
また、商品の特徴が他と変わらない場合もあります。その場合、変換しても差が出ません。比較の記事として扱うほうが適しています。
思いつかないことを、自分の文章力の問題だと考えないでください。多くは、情報が足りていないか、商品と読者が合っていないかのどちらかです。
17.練習の方法
手元にある商品で練習できます。自分が使っているものについて、仕様を五つ書き出し、場面に変換してみてください。
使っているものなら、場面を具体的に書けます。この感覚をつかんでから、使っていない商品に取り組むと、変換の精度が上がります。
練習した内容は、記録しておきます。実際に記事を書くときに使えます。
18.変換表の記入例
架空の小型掃除機を例に、仕様を場面に変換した表です。
| 仕様 | ない場合に起きること | 場面 | できること |
|---|---|---|---|
| 本体重量が軽い | 階段で持ち運ぶと腕が疲れる | 二階建てで上下階を掃除する | 持ち替えずに移動できる |
| 充電式 | コンセントの位置で使える範囲が決まる | 車内を掃除する | 電源のない場所でも使える |
| 連続使用時間が短い | — | 家全体を一度に掃除する | 途中で充電が必要になる(向かない条件) |
三行目のように、変換の途中で向かない場面が見つかることもあります。その行は、欠点の説明にそのまま使えます。
19.まとめ
仕様を一つ選んだら、場面とできることの二つを書き足すところまでを一組の作業にしてください。場面で止めると、読者はまだ自分に当てはめられません。
鍵になるのは、その仕様がない場合に何が起きるかを考えることです。ここから場面が見えてきます。
数値は残したまま、場面を添えます。数値で判断したい読者にも対応できます。
向かない場面も書いてください。読者を絞ることになりますが、該当する読者には確実に伝わります。
変換が思いつかないのは、情報が足りていないか、商品と読者が合っていないかです。文章力の問題ではありません。
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