記事で商品を紹介する作業は、対面の営業とは性質が違います。その場で決めてもらう必要がなく、読者はいつでも離れられるため、押す力より情報の整理のほうが効きます。営業が苦手という自覚は、不利にならない場合があります。

この記事では、売り込みと情報提供の違いを、文章の書き換え例で確認します。CTAの設計や売れる文章の型全般は扱いません。ここでは、勧誘に見える表現を、判断できる説明に直す作業だけを行います。

1.対面の営業と何が違うのか

対面では、相手の反応を見ながら話を変えられます。迷っていれば補足し、条件が合わなければ別の提案をします。その場で決めてもらうための働きかけができます。

記事では、これができません。書いた文章がそのまま届き、読者は好きなときに離脱します。反応を見ることも、追いかけることもできません。

したがって、押す力を発揮する場面がありません。代わりに効くのは、読者が探している情報が揃っているかどうかです。

2.売り込みに見える表現

自分では普通に書いたつもりでも、読者には売り込みに見える表現があります。共通するのは、根拠がないまま断定していることです。

売り込みに見える表現なぜそう見えるか代わりの書き方
絶対におすすめです根拠がない断定この条件に当てはまる人には向きます
今すぐ申し込むべき急がせている期限がある場合は、その期限を書く
使わないと損をします不安をあおっている使った場合と使わない場合の違いを書く
誰にでも合います例外を隠している向かない条件を併記する
圧倒的に優れています比較の根拠がないどの項目で、何と比べたかを書く

右の列に共通するのは、条件と根拠を添えていることです。断定を弱めているのではなく、判断材料を足しています。

3.書き換えの例その1

元の文:「この商品は本当におすすめです。買って損はしません。」

書き換え:「この商品は、週に数回まとめて調理する人に向いています。一度に扱える量が多いためです。ただし、一人分を短時間で作る使い方が中心なら、小型の機種のほうが扱いやすくなります。」

変わったのは、対象を限定した点と、向かない条件を書いた点です。読者は自分が該当するかを判断できます。損をしないという保証は、誰にもできません。

4.書き換えの例その2

元の文:「今なら特典が付いています。急がないと終わってしまいます。」

書き換え:「特典の適用条件と期限は、販売ページに記載されています。確認した時点では期限が設定されていました。申し込む前に、現在の条件を確認してください。」

変わったのは、急がせる表現をやめ、確認先を示した点です。期限は変わることがあるため、記事に書き込むと古くなります。読者に確認してもらう形のほうが正確です。

5.書き換えの例その3

元の文:「他の商品とは比べものになりません。圧倒的な性能です。」

書き換え:「同じ価格帯の三機種と、処理できる容量で比べました。この機種は最も多く、次点との差は表のとおりです。一方、本体の大きさは三機種の中で最大で、置き場所の確保が必要です。」

変わったのは、何と何を、どの項目で比べたかを示した点です。比較の範囲を明示すると、読者は自分の条件に当てはめられます。範囲を書かずに「圧倒的」とだけ書くと、根拠のない主張になります。

6.情報提供として書くときの型

売り込みを避けつつ、読者が判断できる文章にするには、型を持っておくと楽です。次の四つの要素を順に書きます。

判断できる説明文の型

  1. 対象:どういう人に向くか。条件を明示する。
  2. 理由:なぜ向くのか。商品のどの特徴によるのか。
  3. 例外:向かない条件。別の選択肢が良い場合。
  4. 確認:申し込む前に確認すべきこと。変わりやすい情報の確認先。

この四つが揃っていれば、押さなくても読者は判断できます。むしろ、例外を書いてあるほうが、書き手の説明を信頼してもらえます。

7.向かない条件を書くのが怖い場合

欠点を書くと売れなくなるのでは、と心配になることがあります。実際には逆に働く場面が多くあります。

読者は、良いことしか書かれていない記事を警戒します。他のサイトも見て比べるので、書かれていない欠点は結局見つかります。先に書いてあるほうが、説明の信頼が上がります。

また、条件が合わない読者が申し込まなくなるのは、悪いことではありません。合わないまま申し込めば、解約や返品になり、成果も取り消されます。

欠点をどう書くかの具体的な方法は、紹介する商品のデメリットはどう書く?向かない条件を具体的に伝えるで詳しく解説しています。

8.押さなくても移動してもらう

販売ページへの案内も、押す必要はありません。何を確認しに行くのかを書けば、読者は目的を持って移動します。

「詳しくはこちら」だけでは、先に何があるか分かりません。「現在の価格と在庫は販売ページで確認できます」と書けば、確認したい読者は移動します。

移動を促す言葉を強くしても、判断が済んでいない読者は動きません。判断が済む状態を作るほうが、結果として移動につながります。

案内文の作り方については、アフィリエイト記事から販売ページへ案内する文章の作り方で詳しく解説しています。

9.自分の言葉で書けているか

売り込みの表現は、他の記事から借りてきたときに混ざりやすくなります。使い慣れない強い言葉が入っていたら、自分の判断で書いたものか確認してください。

五つのうち一つでも引っかかったら、その箇所を書き直します。強い言葉を弱めるのではなく、条件と根拠を足す方向で直してください。

10.営業が得意な人との違い

営業が得意な人が記事を書くと、対面の型をそのまま持ち込んでしまうことがあります。相手の反応がない場所で押しても、効果は出ません。

逆に、営業が苦手な人は、押さない書き方が自然にできます。条件を並べ、向かない場合も書く。この姿勢は、記事の形式に合っています。

苦手であることが、この作業では不利になりません。必要なのは、読者が何を知りたいかを考える力のほうです。

11.読者からの反応がないとき

押さない書き方にすると、成果が出るまでに時間がかかることがあります。すぐに結果が出ないと、押す書き方に戻したくなります。

その前に確認したいのは、判断に必要な情報が揃っているかです。押しが足りないのではなく、比較の材料や確認すべき点が抜けていることが多くあります。

表現を強くする前に、情報を足す。この順序で改善するほうが、後から問題が起きません。

12.勧めない記事があってもよい

調べた結果、勧められないと判断することがあります。その場合、無理に紹介する必要はありません。勧めないという結論の記事も、読者には役立ちます。

ただし、根拠なく否定するのは避けます。何を確認して、どの条件で合わないと判断したかを書きます。批判が目的ではなく、判断材料を渡すことが目的です。

また、他社の商品を不当に低く評価するのも問題があります。確認していない欠陥を書く、伝聞を事実として書く。こうした書き方は、事実誤認になりかねません。

紹介できる商品がないなら、その分野を扱わないという選択もあります。無理に勧める記事を書くより、扱える分野を探すほうが長く続きます。

13.結局、何を書くか

記事で行うのは、読者の代わりに調べて、整理して、条件を添えて渡すことです。決めるのは読者で、書き手は決めさせる立場にありません。

この理解があれば、営業の技術は必要ありません。必要なのは、調べる手間を惜しまないことと、条件を省略しないことです。

苦手意識で始められずにいるなら、まず一つの商品について、四つの要素で200字書いてみてください。書けたなら、記事も書けます。

書いてみて手が止まるなら、多くの場合は文章力ではなく調査が足りていません。対象、理由、例外、確認事項のどれが書けなかったかを見れば、何を調べればよいかが分かります。営業の技術ではなく、調べる手間が答えになります。

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