第二事業の候補を探す前に、会社の売上が何に依存しているかを調べます。特定の顧客だけでなく、顧客が属する市場、入金の時期、仕事を担う社員、利用する設備にも偏りがあります。ここでは、新しい事業を選ぶための準備として、既存の取引と業務から依存関係の地図を作る方法を説明します。売上を二つに分けるだけで経営上のリスクが分散するとは限りません。
取引先別の売上表を、会社の構造へ読み替える
まず集計の単位と期間をそろえる
会社ごとの取引額を出すときは、比較する期間、対象の売上、取消や返金の扱いをそろえます。繁忙月だけを選ぶと年間の姿とは違う偏りが見えます。反対に、年間合計だけでは、入金が集中する月や特定の案件を失う時期が隠れます。年間の一覧に月別の推移を添えてください。単発の大型案件は、次の年度も続く取引と分けて記録します。
売上構成比は、対象顧客の売上を同じ範囲の総売上で割って求めます。ただし、比率が何%なら危険という共通の線をここで置く必要はありません。契約の残期間、利益、代替顧客へ切り替える時間によって意味が違うからです。取引先の名称と金額を並べるだけで終わらず、その取引が減ったとき何が起きるかを書くための基礎資料にします。
会社名が違っても、同じ要因で落ちることがある
取引先が十社あっても、すべて同じ業界の設備投資に左右されるなら、需要の減少が同時に起こる可能性があります。同じ企業グループの購買判断に従う取引も、請求先の数だけでは独立していると判断できません。地域、用途、支出の決定者、需要が生まれる事情を追記します。分類が不明な相手は推測で埋めず、営業担当への確認事項に残します。
新しい収益源の考え方全体は、既存の既存事業とは別の収益源を作る方法で確認できます。本記事で作るのは候補一覧ではなく、その候補が会社の現在の偏りを変えられるか判断するための資料です。顧客数が増えることと、需要の出所が変わることを分けます。
依存関係を五つの行で記録する
| 対象 | 確認する記録 | 失われたときの影響 |
|---|---|---|
| 顧客・市場 | 取引額、業界、用途、継続条件 | 受注と利益の減少 |
| 回収 | 請求・入金予定、遅延の状況 | 支払いに使える資金の不足 |
| 人材 | 担当業務、代行者、引継ぎ資料 | 受注済みの仕事を提供できない |
| 設備・仕入先 | 共用する設備、調達経路、代替条件 | 提供の停止や原価の増加 |
| 承認・情報 | 決裁者、利用権限、保存場所 | 判断や対応の滞留 |
金額の偏りと、止まる仕事の偏りを分ける
売上の小さな取引でも、そこで得る部品や情報が他の仕事に不可欠なら、影響は売上構成比より大きくなります。反対に、売上の大きな取引でも、原価負担が重く契約終了後に支出を減らせるなら、減収額と資金への影響は一致しません。売上、残る利益、回収、提供に必要な資源を別の欄に置きます。数字の大小をそのまま優先順位にしないためです。
人材の欄では、社員の評価ではなく、会社がどの仕事を一人に集めているかを確認します。その担当が不在のとき、顧客への返答、見積もり、納品、請求を誰が進められるでしょうか。第二事業も同じ担当に集める案なら、本業の依存を増やす場合があります。候補を増やす会議に、代行できない業務の一覧も持ち込みます。
入金の集中は、売上とは別に見る
売上が分散していても、入金予定が同じ月へ集中し、先に仕入れや給与の支払いが必要なら、資金面の余裕は別の検討が必要です。請求額をそのまま使えるお金として扱わず、回収予定と支払い予定を並べます。第二事業に先行支出がある場合は、本業の回収が遅れたときにも支払えるかを考えます。実際の資金判断は自社の帳簿と契約を使って行います。
依存の地図に、会社を一つにまとめた結論だけを書く必要はありません。「市場は集中しているが回収時期は分散」「顧客は分散しているが提供担当は一人」のように、軸ごとに記録します。新規事業の担当者だけで確定せず、営業、経理、提供部門で見方を照合すると、取引一覧には出ない制約を見つけやすくなります。
仮の会社で、見かけの分散を確かめる
説明用に、特定業界向けの研修会社が、同じ業界の顧客へ月額教材を提供する第二事業を考える場面を置きます。これは実例ではありません。研修の受注と教材の契約は別ですが、両方の購入が同じ教育予算から出るなら、その業界で予算が減ると二つとも影響を受ける可能性があります。収入方式を増やしたことだけでは、需要の依存を分けたと説明できません。
さらに、本業の講師が教材の更新と質問対応も行うなら、人材の依存は同じです。一方、研修を実施しない月にも教材の契約が続く条件なら、月別の収入の偏りを変えられるかもしれません。この案の意味は「分散できる・できない」の二択ではなく、どの偏りを変え、どの偏りを残すかで説明します。収入方式の併用を考える際は複数の収益源の併用と集中も参考になります。
別の業界へ商品を提供する案も、すぐに優位とは限りません。新しい顧客の需要を調べる費用、会社の知識が通じる範囲、営業に必要な時間が増えるからです。依存を分けたいという目的と、新市場へ提供できる根拠を両方確認します。既存顧客を使う判断は第二事業も同じ顧客を狙うべきかで詳しく扱います。
会議では、一つの関係が切れた場合をたどる
地図を経営会議へ持ち込んだら、金額の大きな欄だけを見るのではなく、一つの取引が終わる状況を順にたどります。受注が減る、仕入れ量が変わる、担当者に時間ができる、入金が減るという変化は同じ日に起きるとは限りません。受注済みの提供義務や契約済みの支払いが残るかも、実際の契約から確認します。第二事業の着手時期は、その変化の順序と照合して考えます。
この場で出た数字には、確認した記録と担当者の見積もりを区別して印を付けます。「別の顧客をすぐ獲得できる」という意見には、過去の営業期間や現在の商談など、何を根拠にしているかを添えてください。根拠がない見込みを否定するための会議ではありません。調べるべき不足を特定し、誰がいつまでに確認するかを決める会議にします。
作成後の地図には、集計期間、確認した担当、まだ不明な関係、次に見直す契機を記載します。大型契約の更新、主要担当者の交代、取引条件の変更などがあれば、第二事業の審査中でも前提を戻して確認します。最初の地図が正確でも、候補を選ぶまで会社の状況が固定されるわけではありません。更新前の版も残すと、採用当時に何を確認していたか説明できます。
最後に、改善の方法が第二事業だけかを問い直します。顧客の分散、引継ぎ資料、仕入れの代替経路など、本業側の改善で対処できる偏りもあります。新しい収益源を持つ計画と、本業を安定させる計画は併存できますが、目的が同じだから費用をまとめてよいわけではありません。地図を使って、どの対策をどちらの予算で実行するかまで分けてください。
地図の完成後に、第二事業へ求める条件を決める
- 減らしたい依存を一つ選び、現在の記録を添える。
- 第二事業によって変わる関係と、共用する関係を書く。
- 共用する部分が止まった場合の対応を確認する。
- 試行で確かめる条件と、経営会議へ戻す結果を決める。
たとえば、需要の分散を目的にするなら、本業とは別の購入理由があるかを試行で調べます。特定社員への依存を減らす目的なら、外部委託の作業範囲だけでなく、会社側の承認がその社員へ集中しないかも見ます。依存の指摘を、そのまま新事業の賛成理由へ変えず、確認できる条件へ直してください。資料を作ることだけでは状況は変わりません。
収益を生むアフィリエイトサイトも、候補の一つとして比較できます。他社の商品を紹介するため自社の商品開発とは違う構造ですが、広告案件、検索流入、原稿を維持する担当への依存は残ります。仕組みはアフィリエイトの基本へ進み、会社に持たせる役割は事業ポートフォリオの目的で整理してください。依存がない事業を探すより、残る依存を把握して管理できる案を選ぶことが重要です。