「ついに年商千八百万円を達成しました!」。画面の中の男性は、夜景を背に笑っていた。コメント欄には拍手と炎の絵文字が並ぶ。見ていた小池さんも、思わず自分の給与明細を裏返した。誰に見られているわけでもないのに、気持ちだけで数字に負けた気がしたのだ。
ところが、その年商千八百万円が、二千万円で仕入れた物を千八百万円で売った結果だったらどうだろう。急に拍手の音量を調整したくなる。売上の大きさを見せられても、儲かったことまで確認したわけではない。これが、今回の数字の話だ。
登場人物や取引は架空です。不動産の例は、販売目的で仕入れた商品としての物件を想定しています。自分で使っていた建物などの固定資産を売る場合は会計上の扱いが違うため、何でも売却額を年商へ足せるという意味ではありません。
千八百万円の入金に、二千万円の仕入れが隠れていた
小池さんの友人の早川さんが、説明用に紙へ数字を書いた。販売用の商品として、物件を二千万円で仕入れる。それを千八百万円で販売する。ほかの費用を考える前から、差額は二百万円のマイナスになる。
| 架空の取引 | 金額 |
|---|---|
| 販売による売上 | 1,800万円 |
| その商品の仕入れ原価 | 2,000万円 |
| 差額 | −200万円 |
実際の取引には仲介や手続きなど、別の費用も関わる。ここでは仕組みを分かりやすくするために省いているので、二百万円が実際の最終損失になると断定する計算ではない。少なくとも、売上千八百万円だから千八百万円儲かった、という理解ではないことは分かる。
しかも、売上が立つ時点と、実際に入金される時点が同じとは限らない。今回の説明は代金も受け取った場合を想像しているが、年商という数字だけから手元の現金まで分かるわけではない。売れた、儲かった、お金が残った。この三つは、順番に別の確認が要る。
年商は大きくできても、財布は小さくなることがある
「それなら、赤字でたくさん売れば年商だけ増えるのか」。小池さんが言うと、早川さんはうなずいた。もちろん現実には、資金や契約、法令、売れる相手などの制約がある。誰でも簡単に大きな取引ができる、という話ではない。
それでも、採算を度外視して安く売れば、利益とは違う方向へ売上が増える可能性はある。安く買える相手が喜ぶ一方、自分の事業は苦しくなる。「売上が増えた」という文は正しくても、「順調な商売です」という結論まで正しくなるとは限らない。
商品代を立て替えるために借り入れをしていれば、返済なども考える必要がある。派手な販売額の裏で、本人の資金繰りが厳しいこともあり得る。売上だけを目標にして、費用を引いた結果を見ないのは、走行距離だけ自慢して、ガソリン代を忘れた運転に似ている。
小池さんは、広告で「月商百万円」と見ると、毎月百万円を自由に使える人だと思っていた。しかし商売の口座を通過する金額と、生活に使えるお金は違う。大きな川の水が全部、自分の湯船へ入るわけではなかった。
物販なら、商品代が先に出ていく
不動産の数字は大きいので、遠い世界の話に聞こえるかもしれない。しかし、商品を仕入れて売る商売なら、同じ確認が小さい金額でも必要になる。一万円で売れたとして、仕入れに八千円使っていたら、売上全額が自分の成果ではない。
仕入れとの差額が二千円あっても、販売手数料、送料、梱包、広告などがあれば、そこから負担する。どこまでの費用を引いた数字を見せているかで、「利益」という説明の中身も変わる。
物販には、適切な仕入れと販売の仕組みを作って利益を出す事業も当然ある。ここで問題にしているのは商売の種類ではなく、仕入れ代を省いた数字の見せ方だ。年商という指標にも事業規模を知る意味はあるが、それだけを儲けの証明に使うと話が飛ぶ。
小池さんが欲しかったのは、売上のスクリーンショットと同じ金額の生活だった。ところが、その金額のかなりの部分は、次の仕入れを続けるために必要かもしれない。使ってよいお金だと思ってしまえば、次の注文を受ける前に商売が止まることもある。
拍手する前に、数字の名札を見る
年商、年収、月収、利益、手取り。画面の文字が小さいと、どれも似た成功の単位に見える。しかし、言葉の意味は同じではない。特に「月収」などは、発信者が何を含めて使っているかが曖昧なことがある。
そこで、小池さんは数字を見たら、まず名前を読むことにした。会社の売上なのか、個人が受け取った報酬なのか。費用を引く前なのか、何の費用まで引いたのか。対象の期間は実際の一年間なのか、一か月の実績を十二倍しただけなのか。
質問して説明が付くなら、その条件で理解すればよい。説明がないなら、分からない部分を保留する。「きっと儲かっているはず」と、自分の想像で足りない資料を埋める必要はない。
発信者が大きな数字を使ったからといって、直ちに不正や詐欺とは言えない。正確な売上実績を紹介しているだけの場合もある。大切なのは、売上を示す資料から、利益や生活水準まで勝手に読み取らないことだ。
会社の実績を、自分の給料と対決させない
小池さんは、最初に自分の給与明細と年商を比べて落ち込んだ。よく考えると、比較の組み合わせがおかしい。会社の商品代や経費を含む売上と、個人の給与を、そのまま同じ物として並べていた。
給与にも、税などを引く前の支給額と、手元へ振り込まれる金額の違いがある。事業には事業の費用があり、個人の所得や生活費を考えるときにはさらに別の確認が要る。違う段階の数字を比べれば、見栄えのよいほうが勝ちやすい。
「同年代でこんなに差がある」と感じたときは、その差の前に、何を比較しているかを見たい。大きな会社の売上を一人の月給へぶつければ、月給側はたいてい小さく見える。小池さんの働き方の評価が、それで決まるわけではない。
数字の区別を知るのは、人を疑って暮らすためではない。不要な焦りを減らし、事業を選ぶときの条件を自分へ戻すためだ。派手な画面へ拍手をする自由もある。ただ、その拍手の勢いで高額な契約へ進む前に、もう一枚、費用の紙を見たい。
別の会社や別の年と比較する場合も、対象の範囲を合わせる必要がある。連結したグループ全体と一社だけ、年間と数か月だけ、という違いを無視すると、増えた理由まで誤解してしまう。金額の桁へ目が行ったら、いったん単位と期間へ戻る。それだけでも、比較の土台はかなり整う。
聞きたいのは、いくら売ったかの次の話
その商売は、何を提供して売上が立つのか。原価や運営費を引いたら何が残るのか。入金までにどれだけ資金が必要で、次の販売でも同じ条件を作れるのか。こうした質問へ進むと、数字が自慢ではなく事業の説明になる。
費用を引く範囲が違う問題は月収百万円の「収」は何ですかで、商品代を引く前に喜んでしまう話は月商三百万円の物販と仕入れ代で、それぞれ掘り下げる。既存の売上と利益を区別して記録する考え方も、自分の事業を確認する際に役立つ。
商品を仕入れずに紹介する事業を知りたいなら、アフィリエイトの仕組みへ進める。ただし、そこでも広告収入がすべて利益になるわけではない。制作や集客などの費用を含めて考える点は同じだ。
小池さんは給与明細を表へ戻した。画面の年商千八百万円が嘘だったと決めたわけではない。ただ、そこに千八百万円の儲けを勝手に足していたのは自分だと分かった。数字を見る目が少し変わると、夜景の明るさまで、少し落ち着いて見えたのである。
用語の確認:中小企業庁・損益計算書の見方、国税庁・給与所得。売買例と人物は本記事の架空設定です。
当社独自の累計収益保証付き!
丸投げで収益を狙う
アフィリエイトサイトを
手に入れませんか?
アフィリエイト専門のプロが、
企画からサイト構築・記事制作・収益設計まで一括対応。
