本業の顧客事例を第二事業の集客へ使う場合は、以前の公開許可が新しい用途と媒体へ及ぶか確認します。企業名や事例内容の了承、秘密情報、担当者の個人情報、写真や図版の利用条件は別の確認対象です。使いたい完成形を示し、どの部分をどこへ公開できるか記録してから制作してください。

「本業では掲載できた」を、新しい許可へ置き換えない

説明用に、本業で顧客の工程改善を支援した会社が、その事例を新しいオンライン事業の紹介へ載せたい場合を考えます。顧客は以前、本業のパンフレットへの掲載を了承したかもしれません。しかし、新事業の商品販売や広告紹介のページへ使うことまで了承したとは限りません。

相手に依頼するときは、事例の内容だけでなく、何の事業を案内し、どの媒体へ載せ、どういう表現で顧客を紹介するかを示します。「実績として使ってよいですか」だけでは、双方が違う公開を想定する可能性があります。記事、提案資料、広告、SNSなどの利用先を分けて確認します。

掲載する事実と、そこから述べる効果を分ける

本業で行った仕事の事実を、新商品の導入成果として扱わないようにします。過去の事例が新事業の根拠へどう関連するかを説明し、確認していない因果関係を付け足しません。顧客の発言を短くまとめる場合も、元の意味と新しい見出しが一致するかを確認してください。

例えば、資料編集の納品を評価された事例から、新たな集客事業の売上効果まで証明したように見せることはできません。転用できる技能と、新サービスの未確認を区別します。会社の実績を説明する方法は、本業実績を新分野へ伝える範囲へ進めます。

匿名にした事例も、用途と内容を点検する

企業名を消せば、契約や秘密の制約がすべてなくなるわけではありません。業種、所在地、設備、案件の時期などの組合せから相手が分かる可能性もあります。匿名で示す案は、実際の原稿を使って確認してください。個別の数値や内部事情を必要以上に残さないようにします。

事例を一般化するなら、どこを変更したかを社内で記録します。説明用の仮例へ作り直した場合は、実際の顧客事例のように示さないでください。匿名の実例、複数の経験を参考にした説明、完全な仮定例を区別します。掲載の許可と、内容の正確さは別の確認です。

公開前に、四つの確認を別々に終える

対象確認する資料新用途へ必要な問い
企業と事例内容以前の了承、原稿、掲載場所新事業の販促へ使える範囲か
秘密情報契約、受領資料、公開制約出してはいけない箇所があるか
個人に関する情報取得経緯、説明、利用目的氏名・発言・画像等を扱えるか
写真・図版等制作元、権利、利用許諾転載・改変・新媒体の利用条件は何か

顧客企業の担当者から返答があっても、すべての素材や個人情報について同じ判断を受けたとは限りません。返答できる範囲、社内で必要な確認、原稿の承認方法を聞きます。営業上の了解と、画像制作者の利用条件が別に残る場合があります。

企業名と事例内容の了承

社名、ロゴ、案件の説明、成果の数字、引用する発言を、公開案へ対応させます。どの形式で確認を受け、修正後に再確認するかを決めてください。担当者が承認した版と、実際に公開する版が違わないようにします。

第二事業の名称や掲載場所が変わる場合、それが相手の理解した用途へ収まるかを確認します。以前の原稿を再使用するだけでも、新しいページでは見出しや前後の文章で意味が変わることがあります。顧客が新サービスを推奨しているように見える構成になっていないかを点検します。

秘密情報と、公開できる部分

契約で秘密として扱った情報、顧客から受け取った内部資料、共同作業の内容を確認します。自社が作業したから資料全体を自由に公開できるとは判断しません。公開できる部分と、社内の根拠確認にだけ利用する部分を分けて保存します。

顧客が公開に協力したい場合も、他社や別の関係者の秘密が含まれないか調べます。写真の背景、図の注記、ファイル名、画面の一覧など、本文以外にも情報があります。契約の解釈が必要なら、実際の条項と公開案を担当者や専門家へ渡します。

担当者の氏名・発言・写真等

個人を識別する情報を使う場合、取得目的と新しい公開用途を確認します。企業の顧客事例だから、担当者に関する情報も一律に公開できるとは考えません。個人情報保護委員会の通則編などへ沿って、必要な説明と同意等の扱いを個別に調べます。

本人の発言を載せるなら、言葉の意味と表示する肩書き、掲載場所を確認します。写真を使う場合は、本人への確認と撮影者等の利用条件が別に関係することがあります。個人情報の目的審査は、本業の情報を第二事業へ使う確認へ渡します。

素材の利用条件

図版、写真、映像、文章を誰が制作し、どの範囲で利用できるかを確認します。利用許諾を受けた素材は、契約で定めた用途や条件へ沿って扱います。文化庁の契約マニュアルでも、許諾の範囲と権利の譲渡は区別されています。支払いや納品だけで自由な転用を想定しないようにします。

新しい媒体へ掲載する、トリミングする、別の見出しを付ける、外注先へ編集を依頼するなど、必要な操作を具体化します。取扱いが分からない素材は、使えると確認した素材へ替える方法もあります。引用の判断は、引用と著作権を確認する方法へ進めます。

許可依頼には、完成形と運用条件を添える

依頼資料は、目的、媒体、対象読者、公開予定の原稿や画像、確認を求める箇所へ分けます。公開期間、更新、二次利用、広告への利用、削除を求められた場合の連絡先も、実際の計画に合わせて相談します。使わない予定の用途まで、曖昧に包括許可として求めないようにします。

原稿の変更と再利用の境界を決める

誤字を直す場合と、成果の説明や見出しを変える場合では影響が違います。どの変更を再確認するかを具体例で合わせます。新しい商品案内のページへ事例を移す場合、公開先が増える場合、広告の見出しへ抜粋する場合も別の確認対象として整理します。

修正を受けたら、変更した箇所と最終版を記録します。複数の担当が返答する場合は、社名、内容、素材、個人情報のどこを確認した回答かを分けます。古い許可のメールと新しい原稿が別々に保管され、担当者が対応を確認できない状態を避けます。

公開した後の変更と終了も管理する

公開後に顧客の名称、担当、商品、事例の条件が変わった場合、確認が必要な箇所を記録します。事例の公開を終える条件があるなら、掲載ページや抜粋先を把握できるようにします。元の記事だけを消して、提案資料やSNSへ旧内容が残る問題を防ぎます。

公開物の個人情報の点検は、画像と画面に映る情報の確認を参照してください。了承した本文でも、スクリーンショットへ別の顧客名が映る場合があります。許可の確認と実際の公開物の検査を別の工程にします。

許可が得られない部分がある場合は、事例を使わず説明する、新しく試作する、公開可能な一般情報へ替える方法を検討します。集客に必要だからという理由で、契約や個人情報、素材の制約を押し切らないようにします。新事業の信頼は、許可された事実と適切な根拠で説明します。

収益を生むアフィリエイトサイトへ本業の事例を使う場合も、成果報酬を得る商品紹介との関係を相手へ説明します。事例へ登場する顧客が紹介商品を推奨していると誤解されないかを確認してください。使える範囲が限られるなら、サイトの企画をその条件へ合わせます。

公開許可を取り直す作業は、形式的な了承を増やすことではありません。相手が何に協力したかを理解し、自社もその範囲を追跡できるようにします。完成形、用途、媒体、確認対象、変更時の扱いを記録し、本業で得た信頼を新しい販促へ無条件に流用しないことが重要です。