同じ題材でも、自分で試して書く場合と、資料を集めて整理する場合では、準備がまったく違います。前者は道具と時間と記録の手間がかかり、後者は資料を探す力と正確に要約する力が求められます。どちらを選ぶかで、揃えるものが変わります。

この記事では、二つの方式の準備を比べます。一次情報をどう作るかという具体的な方法や、経験と専門性に関する総論は別の記事の範囲です。ここでは、始める前に何を用意するかだけを扱います。

1.二つの方式

自分で試して書く方式では、商品を買う、サービスに申し込む、実際に使うといった行動が前提になります。書く内容の中心は、自分が確認した事実です。

資料を調べて書く方式では、公開されている情報を集め、整理して伝えます。書く内容の中心は、散らばっている情報を読者が使える形にまとめたものです。

どちらが優れているということはありません。扱う題材と、自分が用意できる資源によって、選ぶものが変わります。

2.同じ題材で準備を比べる

仮に、ある手続きの方法を説明する記事を書くとします。二つの方式で、必要な準備を並べます。

準備自分で試す方式資料を調べる方式
費用手続きにかかる費用原則なし
時間実際の手続きにかかる時間資料を探して読む時間
道具記録用の手段、撮影機材特になし
記録操作の手順、所要時間、画面の様子出典のURL、確認日、該当箇所
確認自分の結果が一般的か資料の内容を正確に読めているか
書ける範囲自分の条件での結果公開されている条件

費用がかかるかどうかが、最も分かりやすい違いです。ただし、資料を調べる方式でも、探して読む時間はかかります。無料だから楽、とは限りません。

3.自分で試す方式の準備

まず、記録の方法を決めます。後から思い出して書こうとすると、細部が抜けます。手順を進めながら、その場で記録する仕組みが必要です。

記録する項目は、何をしたか、何が必要だったか、どのくらい時間がかかったか、どこで迷ったかです。これらは、終わってからでは正確に思い出せません。

撮影する場合は、事前に何を撮るかを決めておきます。手続きの途中で撮り直しができない場面もあります。画面を記録する場合は、個人情報が写り込まないよう注意します。

4.自分で試す方式の限界

自分の結果が、他の人にも当てはまるとは限りません。条件が違えば、手続きの流れも所要時間も変わります。

したがって、書くときは条件を明示します。「この条件で、この時期に行った結果」という形にします。条件を書かずに一般論として書くと、読者の状況と合いません。

また、一度の経験は一つの事例です。何度も試せない手続きでは、比較ができません。この点は、正直に書いておくほうが誠実です。

事実と感想と推測を分けて書く方法は、ブログに自分の意見を書いてよい?事実・感想・推測の分け方で詳しく解説しています。

5.資料を調べる方式の準備

まず、どこに公式な情報があるかを把握します。省庁、業界団体、提供元の公式ページなど、一次的な資料の所在を知っておきます。

次に、記録の様式を決めます。主張、出典のURL、確認した日付、該当する記述の場所。この四つを残しておかないと、後から検証できません。

要約するときは、意味を変えないよう注意します。元の資料に条件が付いているのに、その条件を落として書くと、誤った情報になります。

資料の集め方と記録の残し方は、ブログ記事を書く前に資料を集めるには?公式情報の探し方とメモの残し方で詳しく解説しています。

6.資料を調べる方式の限界

公開されている情報しか書けません。実際に使ってみないと分からないこと、たとえば操作の分かりにくさや、想定外の手間については触れられません。

また、資料が存在しない領域では書けません。公式な情報がない場合、推測で埋めることはできません。分からないと書くか、別の題材を選ぶことになります。

情報を整理しただけでは、他のサイトと内容が似ることもあります。同じ資料を読めば同じ結論になるためです。差が出るのは、整理の仕方と、どの情報を組み合わせるかです。

7.組み合わせる

実際には、二つを組み合わせることが多くなります。条件は公式資料で確認し、実際の手順は自分で試した記録を使う、という形です。

この場合、どこまでが資料に基づく情報で、どこからが自分の経験かを区別して書きます。混ぜて書くと、読者はどちらの根拠なのか分かりません。

区別の仕方は簡単です。「公式の案内では〜とされています」「自分が試した際は〜でした」と、主語を変えるだけで伝わります。

8.道具の違い

道具自分で試す方式資料を調べる方式
記録用の手段必須必須
撮影機材必要な場合が多い不要なことが多い
保存場所写真や記録の保管資料の控えの保管
計測の手段所要時間や分量を測る不要
資料の管理表あると便利必須

資料を調べる方式でも、管理表は必要です。どの主張がどの資料に基づくかを追えないと、後から内容を更新できません。

9.どちらを選ぶかの基準

扱う題材が、使ってみないと分からないものかどうかで決まります。使い勝手、操作性、実際の手間といった要素が判断に関わるなら、自分で試す方式が必要です。

条件の比較、制度の説明、選び方の整理といった内容なら、資料を調べる方式で書けます。むしろ、使ってみても分からない部分のほうが多い題材もあります。

費用と時間の制約も判断材料です。すべてを自分で試すのは現実的ではありません。試すものを絞り、残りは資料で補う形が実際的です。

10.費用をかけずに独自性を出す

資料を調べる方式でも、他にない情報を作ることはできます。複数の資料を横断して比べる、提供元に質問して回答を得る、といった方法です。

質問して得た回答は、公開されていない情報になります。ただし、回答を掲載してよいかを確認する必要がありますし、個別の回答が全員に当てはまるとは限りません。

買わずに独自の情報を作る方法は、商品を買わずに一次情報を作る方法で詳しく解説しています。

11.更新の負担

自分で試した記録は、時間が経つと古くなります。手続きの流れが変わっていても、自分では気づきません。定期的に確認する必要があります。

資料に基づく記事も、資料が更新されれば古くなります。ただし、出典を記録しておけば、元の資料を見るだけで変更が分かります。更新の手間は、こちらのほうが軽くなります。

どちらの方式でも、確認した日付を記事に書いておきます。読者が情報の新しさを判断できますし、自分が見直すときの目印にもなります。

12.読者に示す根拠

自分で試した場合の根拠は、記録です。いつ、どの条件で、何をして、どうなったか。これを書けば、読者は自分の条件と比べられます。

資料に基づく場合の根拠は、出典です。どの資料の、どの部分に基づいているか。読者が自分で確認できる形にします。

13.最初に選ぶなら

始めたばかりの段階では、資料を調べる方式のほうが着手しやすくなります。費用がかからず、題材の幅も広いためです。

試す方式は、費用と時間がかかる分、書ける題材が限られます。最初から全部を自分で試そうとすると、記事が増えません。

資料で書ける記事を積みながら、試す価値の高いものだけを選んで実際に試す。この配分が現実的です。

14.混ぜたときに起きやすい問題

二つを組み合わせると、区別が曖昧になることがあります。資料で読んだ内容を、自分が確認したかのように書いてしまう場合です。

これは意図的でなくても起こります。何度も読んだ資料の内容は、自分の知識として定着します。書くときに、出典を思い出せなくなるのです。

防ぐには、書きながら出典を記録する習慣が要ります。後からまとめて出典を付けようとすると、どれがどこから来た情報か分からなくなります。

また、自分の経験を一般化しすぎるのも起きやすい問題です。一度の経験を「〜は通常こうなる」と書くと、根拠を超えた記述になります。

15.どちらでも変わらないこと

どちらの方式でも、読者の疑問に答えるという目的は同じです。方式は手段であって、目的ではありません。

また、確認していないことを断定しない、条件を明示する、出典を残すという原則も共通です。方式が違っても、書き方の基本は変わりません。

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