帰りの電車で、坂田さんは広告を見つけた。「一日たった十分。スマホだけ。初心者でも収入に」。坂田さんが毎朝、駅まで歩くより短い。自分は毎日十分以上スマホを触っているのに、残高だけがなかなか増えない。どこかに秘密の十分があるのだろうか。
広告の人物は、海の見える部屋で笑っていた。坂田さんの前には、車内ドアの注意書きがある。比較対象が少し不公平だ。しかし、この日の坂田さんは残業帰りだった。細かい条件を読む元気より、「自分にも何とかできそう」と思いたい気持ちのほうが強かった。
ここで描く広告や人物は架空です。特定の表現だけで詐欺と決めつけるための記事ではありません。短い言葉が、判断に必要な条件をどこまで省いているかを考える話です。在宅で仕事をすることや、外出に困難を抱える人の働き方そのものを否定するものでもありません。
その十分は、何が終わった後の十分なのか
坂田さんが説明を読むと、毎日の作業は商品の注文確認だという。なるほど、注文が数件なら十分で済む日もあるだろう。ところが、そもそも商品を選ぶ時間、仕入れ先と交渉する時間、写真を撮る時間、説明を書く時間は、別のページへ引っ越していた。
質問への対応、返品の処理、入金の確認も別だった。十分という数字は、一日全体の仕事量ではなく、ある日の一部分だけを切り取ったものかもしれない。映画の予告を二分見て、「二分で映画一本を鑑賞できた」と言うくらい、途中が省略されている。
自動化している場合も同じだ。設定を作った人、異常が起きたときに対応する人、外注費を払う人がいる。自分の作業時間が短いことはあり得るが、必要な仕事まで消滅したとは限らない。自動販売機も、商品と釣り銭が自然発生しているわけではない。
「一日十分」は、いつから数え、何を含め、どのくらいの期間を観察した数字なのか。坂田さんは、たった三つの質問をするだけで、広告の中から急に人間の仕事が何人分も現れることに驚いた。
誰でもできる操作と、誰でも利益が出る事業は違う
説明会では、「このボタンを押すだけ」と紹介された。坂田さんにも押せそうだった。むしろ、ボタンを押すことなら会社で相当な経験がある。毎日の勤怠入力だけでも、押す技術は十分に鍛えられている。
しかし、簡単に操作できることと、その操作の先でお客さんがお金を払うことは違う。出品できても売れるとは限らず、記事を公開できても読まれるとは限らない。人が買う理由や、利益を残せる条件まで、ボタンに内蔵されているわけではないのだ。
誰でも同じ商品を同じ価格で販売できるなら、お客さんが自分を選ぶ理由はどこにあるのか。簡単に参入できることは入口の軽さであり、その後の競争の軽さを保証しない。この違いは、ネット物販と資金力の壁でも扱っている。
坂田さんは、操作の実演が終わった後に、購入者の話がほとんど出ていなかったことに気づいた。売る側が何を押すかは詳しいのに、買う側がなぜ払うかは薄い。簡単さの説明だけで、商売の説明まで聞いたつもりになっていた。
無料の入口から、有料の階段が伸びている
登録は無料だった。最初の資料も無料だった。坂田さんは、まだ一円も払っていないから大丈夫だと思った。ところが次の案内には、便利なツール、その次には継続サポート、さらに個別指導が登場した。無料の玄関を入ったら、上の階への階段に料金所があった。
有料の教材や支援そのものが問題なのではない。教える仕事には費用も価値もある。気にしたいのは、最初に想像した予算と、結果を目指すために必要と説明される総額が、後から大きく変わっていないかだ。
たとえば、道具の費用、広告費、月額利用料、仕入れ代を別々に示されると、一つひとつは払えそうに見える。しかし、それらが同時に必要なら合計で考えなければならない。利益が出る前に、何か月分を支払えるのかという問題もある。
坂田さんは、申込画面を閉じて紙に書いた。契約時に払う額、毎月かかる額、仕事を始めるために別途必要な額、途中でやめたときに残る支払い。広告より地味な紙だったが、将来の口座には広告より関係が深い。
「あなたのため」は、誰の売上につながっているか
「本当に儲かるなら、自分でやればいいのでは」。坂田さんは説明会の途中でそう思った。この疑問は持ってよい。ただし、教えるほうが得意な人、事業と教育を両立する人、別の収入源を持つ人もいるので、教えていることだけで不正の証拠にはならない。
そこで、相手の気持ちを当てるのではなく、お金の流れを見る。自分が商品を売って初めて相手も利益を得るのか。自分が講座へ申し込んだ時点で相手の売上になるのか。紹介するツールやサービスを契約すると、紹介料が発生するのか。
後者の仕組みがあっても、説明され、内容に納得できるなら、それだけで悪いとは言えない。ただ、参加者の成功と、教える側の売上が、いつも同じ方向へ動くとは限らないことは知っておきたい。
坂田さんは、受講者の成功画面より先に、何に対して料金を払う契約なのかを確認することにした。収益の約束なのか、教材の提供なのか、相談できる機会なのか。この違いを曖昧にしたまま買うと、期待だけが保証付きで、契約内容は別物というすれ違いになる。
不安な人を狙う言葉を、努力不足の話にすり替えない
残業が多い人、家を離れにくい人、今の収入に不安がある人。「短時間」「自宅で」「経験不要」という言葉が魅力的なのは自然なことだ。坂田さんが説明を読み進めたのも、怠けたかったからではない。すでに疲れていたから、続けられる方法が欲しかった。
それなのに、契約後にうまくいかないと、急に「行動量が足りない」「考え方が悪い」と言われる。最初は簡単さを強調して、後から結果の責任をすべて本人へ移すなら、説明に筋が通っているか立ち止まりたい。
失敗をした人を「知識がないから」と笑っても、勧誘の仕組みは見えない。必要な条件を伏せる、確認する時間を奪う、周囲へ相談しにくくする。そうした働きかけの有無を具体的に見たほうが、次に同じ場面へ出会ったときに役立つ。
坂田さんは、誰かに相談するのが恥ずかしかった。しかし「今すぐ決めないと機会を逃す」と言われたときほど、画面から一度離れることにした。急いでいるのが自分なのか、契約を取りたい相手なのか、離れてみると少し分かることがある。
説明できない収益より、説明できる仕事を選ぶ
どんな人へ、何を提供し、その人がなぜお金を払うのか。必要な費用は何で、自分が担う仕事は何なのか。ここが説明できないまま、目標月収だけを言えても、商売が分かったとは言いにくい。
時間を短くする工夫は価値がある。ただし、すべての作業を省いたふりをする宣伝とは分けて考えたい。分からない部分を質問し、説明が変わるなら見送り、持ち帰って条件を比べる。それは消極的なのではなく、お金を使う側のまともな仕事だ。
派手な成功例の分母は成功者十人、入会者は何人?で、教える事業の収益源は物販と講座のどちらで稼いでいる?で、それぞれ別の角度から考えている。
アフィリエイトなどの情報発信型事業を検討する場合も、同じ物差しで見たい。アフィリエイトの仕組みを読んだうえで、記事制作、集客、紹介先の確認という実際の仕事を理解する。外注する場合も、費用と依頼範囲を確認し、収益が自動的に保証されると受け取らないことが大切だ。
坂田さんは、その夜は何も申し込まなかった。十分で稼ぐ方法は見つからなかったが、十分で契約しない方法は身についた。帰り道のスマホから、少なくとも一つ、急いで押さなくてよいボタンが減ったのである。
参考:消費者庁・SNS等を通じた投資や副業などの勧誘にご注意ください。本記事の物語は、この資料の相談事例を再現したものではありません。
当社独自の累計収益保証付き!
丸投げで収益を狙う
アフィリエイトサイトを
手に入れませんか?
アフィリエイト専門のプロが、
企画からサイト構築・記事制作・収益設計まで一括対応。
