西田さんの休日は、チャイムで始まる。仕入れた商品が届き、出荷する荷物を集荷してもらい、返ってきた商品も受け取る。マンションの一室なのに、玄関だけ小さな物流拠点になっていた。家族からは「次の段ボールは誰の席に座るの」と聞かれている。

そこで西田さんは、保管も発送も外部へ任せることにした。これで土日が戻ってくる。ところが初月の請求書を見て、別のものが出ていったことに気づいた。売れた商品の利益まで、一緒に丁寧に出荷されていたのである。

人物や料金は説明のための架空の設定です。特定の倉庫や販売サービスの料金を示すものではありません。外注は便利だから使う価値がある。ただし、便利さを買った後の採算で事業を考えるという話です。

一個の配送費だけ見て、分かった気になっていた

西田さんが最初に見たのは、一件当たりの出荷料金だった。毎回の梱包と発送を考えると、払ってもいい金額に見えた。ところが料金表を広げると、入庫、保管、梱包材、出荷、返品など、いくつもの項目が並んでいた。

すべてが別料金のサービスばかりではないし、含まれる作業も業者ごとに違う。だからこそ、「一件いくら」という一つの数字だけでは比較できない。何が含まれ、どの状態になると追加になるかを読む必要がある。

届いた商品を棚へ入れるには、受け取りや数量の確認がある。注文後には商品を探し、梱包し、配送へ回す。返品されたら、また状態を確認する。自宅でしていたときは一続きの家事のように感じていた仕事に、それぞれ名前と費用が付いていた。

請求書に知らない作業が増えたのではない。自分でしていたとき、その作業に値段を付けていなかっただけだ。西田さんは、今まで週末を無料の資材として使っていたことにも気づいた。

売れた一個に、いくら残るのかを組み立て直す

架空の例として、一個三千円で売る商品を考える。仕入れ代は千六百円、販売時の手数料は三百円、倉庫からの出荷と配送など、その注文で増える費用を六百円とする。この条件なら、一個売れて残るのは五百円だ。

架空の一注文金額
販売価格3,000円
仕入れ代−1,600円
販売時の手数料−300円
出荷・配送等−600円
ここまでの残り500円

この五百円は、まだ最終利益ではない。保管などの固定的な費用、広告費、返品による負担、利用しているサービスの費用などが別にあれば、さらに引く。税の取扱いによる差を省いた単純な比較例なので、実際には自分の条件で作り直したい。

月に百個なら、ここまでで五万円。仮に別途の保管等が月二万円なら残りは三万円で、そこからまだ事業のほかの費用を負担する。「月商三十万円」だけ聞いたときの景気のよさと、かなり景色が違ってくる。

西田さんは、外注前に使っていた計算表から、自宅発送の費用を消して倉庫費用を入れ直した。配送費を二重に引いたり、逆に両方とも消したりしないよう、どの作業を誰が担うかを合わせて見る。計算表にも引っ越しの手続きが必要だった。

売れない月にも、商品は場所を取っている

注文が減れば出荷に応じた費用は減ることが多い。一方、商品を保管しているなら、契約に従った保管料などは続く。西田さんは、売れない商品は静かに待っていると思っていたが、料金の面では静かに請求を発生させていた。

商品によって、大きさや重さ、保管の条件は違う。軽くてもかさばる物、丈夫に見えて管理に注意が要る物もある。仕入れ代が安い商品でも、扱うための費用まで安いとは限らない。

長く動かない在庫を引き取る場合、返送や取り出しの費用がかかることもある。処分を頼む場合も条件を確認したい。預ければ、売れ残りの判断まで倉庫が無償で肩代わりしてくれるわけではない。

自宅で場所を塞ぐ負担については、売れる予定だった在庫との共同生活で扱っている。外へ移すと部屋は空くが、その空間を維持する費用を事業から払うことになる。段ボールを見なくなったから、問題がなくなったとは限らないのだ。

返品は、出荷ボタンの逆再生では済まない

西田さんは、返品された商品をもう一度売れると思っていた。ところが実際には、開封されている物、包装が傷んでいる物、状態確認に時間がかかる物が混じる。受け取って棚へ戻すだけで終わらない場合がある。

再販売の可否を誰が判断するのか。写真で報告してもらえるのか。再梱包や検品はどこまで含まれるのか。外注先に頼める範囲と、自分で判断する範囲を決めていないと、戻ってきた商品が判断待ちの在庫としてたまることもある。

販売が増えるほど、通常とは違う対応の件数も増える可能性がある。全注文が同じ料金で何事もなく完了する計算だけでは、少しの不具合で採算が変わる。普段の注文と、手間のかかる注文の両方を想像しておきたい。

ここで外注先を「追加料金ばかり取る」と責めても始まらない。必要な作業には人と時間が要る。確認したいのは、その料金が適切に説明され、自分の商売で負担できるかだ。便利な仕組みを買うことと、仕組みを理解しなくてよいことは違う。

自分でやれば、費用がゼロになるわけでもない

料金表を見た西田さんは、一度は全部自分へ戻そうと思った。しかし、戻せば梱包台も段ボールも休日の作業も復活する。現金の支出を減らせても、その分の時間と自宅の場所は使うことになる。

一時間に何件こなせるか、忙しい日や体調を崩した日に対応できるか。自分で働く場合も、続けられる条件で考えたい。家族の手伝いを当たり前に足して成立する計算なら、手伝う側の負担まで無かったことにしないほうがよい。

外注によって浮いた時間を、商品選定や説明の改善などに使い、事業をよくできる場合もある。だから、外注したら必ず損をするわけではない。自分が作業する場合と任せる場合を、費用だけでなく処理できる量や安定性も含めて比べる必要がある。

西田さんは、発送に向いている商品と、少量のうちは自分で対応する商品を分けた。全部を一度に任せる案より管理の手間は残るが、自分の販売規模には合っていた。楽になる方法も、一種類とは限らない。

見積もりは、売れ行きがよい月だけでなく、通常の月と売れない月でも作ってみる。固定的な費用を販売数で割ると、注文が少ない月ほど一個当たりの負担は重くなる。平均の販売数を一つ入れて安心するより、どの程度まで落ちると続けにくいかを知るほうが、預ける数量を決めやすい。

外注した後にも残る商売かを、仕入れる前に見る

忙しくなったら人に任せよう、と考えるなら、最初から外注後の費用も試算しておきたい。自分が無料で働いている間しか成り立たない価格では、販売が伸びた瞬間に逃げ場がなくなることがある。

商品代だけで採算を決めず、保管からお客さんの手元まで届ける費用を見渡す。さらに、少し売上が落ちたり返品が増えたりした場合でも続けられるかを確かめる。細かな見積もりは派手ではないが、忙しさだけが増える未来を避ける材料にはなる。

売上と利益の入口は月商三百万円の物販と仕入れ代へ、成長によって資金が不足する問題は売上を倍にするとお金が足りないへ。それぞれ、物流の外注とは別の計算をしておきたい。

在庫や出荷を持たない事業と比較するなら、物販とオンラインの副業の違いも読んでみたい。アフィリエイトにも記事や集客の費用があるので、荷物がないことと、仕事やコストがないことを混同しないのが大切だ。

西田さんの玄関には、ようやく靴を置く場所が戻った。売上が全部自分の物になる夢は少し小さくなったが、料金を引いた後に残せる利益と、取り戻せる休日は見えてきた。倉庫へ送り出すのは商品であって、採算の確認まで送り出してはいけないのである。

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