人に作業を任せると、負担は確かに減ります。ただ、その人が抜けたときに何が起きるかは、任せた時点では見えません。

手順が本人の頭の中にしかない場合、抜けた瞬間にその作業は止まります。任せる前より状況が悪くなることもあります。

ここでは、止まらない形で任せるために必要なものを整理します。

任せた時点では見えない問題

作業が回っているあいだ、手順の有無は問題になりません。

抜けたときに起きること

  1. 何をしていたのかが分からない
  2. どこに情報があるのかが分からない
  3. 途中の作業がどこまで進んでいたか分からない
  4. 次の人に説明することができない

手順が記録されていない状態で任せると、担当者が抜けた時点でその作業ごと止まります。

任せる前は自分でできていた作業が、任せたあとにはできなくなっている。この状態が起きます。

記録がないと、探すことから始まる

作業の中身以上に問題になるのが、情報の所在です。

これらが分からないと、作業を再開する前に探す時間がかかります。場合によっては、探しても見つかりません。

手順書に入れるもの

作業手順だけを書いても、実際には足りません。

記録しておく四項目

  1. 作業の手順(何を、どの順で行うか)
  2. 情報の場所(必要なものがどこにあるか)
  3. 判断の基準(迷ったときにどう決めるか)
  4. 異常時の対応(うまくいかないときどうするか)

3番と4番が抜けている手順書は多くあります。この二つがないと、想定通りに進んでいるあいだしか使えません。

想定例:手順書の有無による差

考え方を示すための想定例です。実在の事例ではありません。

記録がない場合

  • 担当者が抜ける 作業が停止
  • 再開までの期間 手順の再構築が必要
  • その間の影響 情報が古くなる

記録がある場合

  • 担当者が抜ける 手順書を渡して引き継ぐ
  • 再開までの期間 短い
  • その間の影響 限定的

差が出るのは、抜けたあとの期間です。記録があれば、その期間を短くできます。

誰が書くか

手順書を運営者が一人で書こうとすると、進みません。実際に作業している人のほうが、細かい部分を把握しています。

後から書いてもらうより、作業と同時に書いてもらうほうが確実です。

更新されない手順書

書いただけで放置された手順書は、かえって危険です。実際の作業と内容がずれていくためです。

ずれが起きる場面

  • 使うサービスの画面が変わった 手順が合わない
  • 紹介先の条件が変わった 基準が古い
  • 作業のやり方を改善した 記録に反映されない

古い手順書を信じて作業すると、間違った結果になります。書いた時点より状態が悪くなる場合があるのはこのためです。

更新のきっかけを決めておくと、ずれが積み上がりにくくなります。作業中に手順と違う点に気付いたら、その場で直すという運用が現実的です。

引き継ぎは、抜ける前に行う

担当者が抜けると決まってから引き継ぎを始めると、期間が足りないことがあります。

すべてを文書にする必要はない

記録を増やすほど良いというものでもありません。使われない文書は、更新もされず古くなります。

対象を絞る基準は、その作業が止まったときの影響の大きさです。

影響が小さい作業まで文書化すると、維持だけで時間を使います。止まると困る作業に絞れば、量は限られます。

この記事で扱っていない点

ここで述べたのは、作業が止まらない形にするための記録の話です。誰にどう依頼するか、どのような条件で契約するかについては触れていません。

依頼の形式が変わっても、記録が必要である点は共通します。単発の依頼でも、継続的な依頼でも、手順がなければ説明から始めることになります。

いま止まると困る作業を三つ

自分以外の人が担当している作業のうち、明日止まると困るものを三つ挙げてみてください。それぞれについて、手順が記録されているかを確認します。

記録がないものから順に書き出せば、必要な範囲は自然に絞られます。全部を一度に整える必要はありません。

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