人に作業を任せると、負担は確かに減ります。ただ、その人が抜けたときに何が起きるかは、任せた時点では見えません。
手順が本人の頭の中にしかない場合、抜けた瞬間にその作業は止まります。任せる前より状況が悪くなることもあります。
ここでは、止まらない形で任せるために必要なものを整理します。
任せた時点では見えない問題
作業が回っているあいだ、手順の有無は問題になりません。
抜けたときに起きること
- 何をしていたのかが分からない
- どこに情報があるのかが分からない
- 途中の作業がどこまで進んでいたか分からない
- 次の人に説明することができない
手順が記録されていない状態で任せると、担当者が抜けた時点でその作業ごと止まります。
任せる前は自分でできていた作業が、任せたあとにはできなくなっている。この状態が起きます。
記録がないと、探すことから始まる
作業の中身以上に問題になるのが、情報の所在です。
- 使っているサービスのアカウントがどこにあるか
- 作業中のファイルがどこに置かれているか
- 紹介先とのやりとりがどこに残っているか
- 過去の変更履歴がどこにあるか
これらが分からないと、作業を再開する前に探す時間がかかります。場合によっては、探しても見つかりません。
手順書に入れるもの
作業手順だけを書いても、実際には足りません。
記録しておく四項目
- 作業の手順(何を、どの順で行うか)
- 情報の場所(必要なものがどこにあるか)
- 判断の基準(迷ったときにどう決めるか)
- 異常時の対応(うまくいかないときどうするか)
3番と4番が抜けている手順書は多くあります。この二つがないと、想定通りに進んでいるあいだしか使えません。
想定例:手順書の有無による差
考え方を示すための想定例です。実在の事例ではありません。
記録がない場合
- 担当者が抜ける 作業が停止
- 再開までの期間 手順の再構築が必要
- その間の影響 情報が古くなる
記録がある場合
- 担当者が抜ける 手順書を渡して引き継ぐ
- 再開までの期間 短い
- その間の影響 限定的
差が出るのは、抜けたあとの期間です。記録があれば、その期間を短くできます。
誰が書くか
手順書を運営者が一人で書こうとすると、進みません。実際に作業している人のほうが、細かい部分を把握しています。
- 作業を任せる時点で、記録も依頼内容に含める
- 初回の作業時に、手順を書きながら進めてもらう
- 迷った箇所と、その判断を追記してもらう
- 運営者は、内容を確認して不足を補う
後から書いてもらうより、作業と同時に書いてもらうほうが確実です。
更新されない手順書
書いただけで放置された手順書は、かえって危険です。実際の作業と内容がずれていくためです。
ずれが起きる場面
- 使うサービスの画面が変わった 手順が合わない
- 紹介先の条件が変わった 基準が古い
- 作業のやり方を改善した 記録に反映されない
古い手順書を信じて作業すると、間違った結果になります。書いた時点より状態が悪くなる場合があるのはこのためです。
更新のきっかけを決めておくと、ずれが積み上がりにくくなります。作業中に手順と違う点に気付いたら、その場で直すという運用が現実的です。
引き継ぎは、抜ける前に行う
担当者が抜けると決まってから引き継ぎを始めると、期間が足りないことがあります。
- 手順書の作成は、任せ始めた時点から
- 複数人が同じ作業を分かる状態にしておく
- 引き継ぎ期間には、実際に作業してもらう
- 疑問点が出た箇所を、手順書に追記する
-
一人にしか頼んでいない場合はどうしますか
記録があれば、別の人に頼み直すことができます。人数より、記録の有無のほうが影響します。
-
手順書はどの程度詳しく書きますか
初めて見る人が実行できる程度が目安です。詳しすぎると更新の負担が大きくなります。
すべてを文書にする必要はない
記録を増やすほど良いというものでもありません。使われない文書は、更新もされず古くなります。
対象を絞る基準は、その作業が止まったときの影響の大きさです。
影響が小さい作業まで文書化すると、維持だけで時間を使います。止まると困る作業に絞れば、量は限られます。
この記事で扱っていない点
ここで述べたのは、作業が止まらない形にするための記録の話です。誰にどう依頼するか、どのような条件で契約するかについては触れていません。
依頼の形式が変わっても、記録が必要である点は共通します。単発の依頼でも、継続的な依頼でも、手順がなければ説明から始めることになります。
いま止まると困る作業を三つ
自分以外の人が担当している作業のうち、明日止まると困るものを三つ挙げてみてください。それぞれについて、手順が記録されているかを確認します。
記録がないものから順に書き出せば、必要な範囲は自然に絞られます。全部を一度に整える必要はありません。
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