仕事や経験を通じて詳しくなった分野があれば、それを扱うのは有力な選択です。調べる時間が短くて済み、正確さも保てます。

ただ、詳しいことがそのまま成果につながるわけではありません。書ける内容と、読者が知りたい内容がずれることがあるためです。

知識の深さと、読者の判断を助けることは、別の軸になります。

説明したい部分と、知りたい部分がずれる

詳しい人ほど、細部に価値を感じます。

関心の位置の違い

  • 詳しい人が語りたい 仕組み、背景、例外
  • 購入者が知りたい 自分に合うか、いくらか

専門家が説明したい細部と、購入者が知りたい条件は異なることがあります。

詳細な説明は、正確さの面では価値があります。ただ、判断の手前で読者が離れれば、成果には結びつきません。

前提を飛ばしてしまう

詳しい人が書くと、初めての読者がつまずく箇所を通り過ぎることがあります。

本人にとっては自明なため、抜けていることに気付きません。読者にとっては、そこが最初の壁になります。

詳しさは、読者との距離を広げる方向にも働きます。

知識を、判断材料に変換する

持っている知識を、そのまま出すのではなく、読者の判断に使える形に置き換えます。

変換の手順

  1. 読者が決めるべきことを特定する
  2. その決定に影響する要素を挙げる
  3. 自分の知識のうち、その要素に関わる部分を選ぶ
  4. それ以外は、別記事に分けるか省く

4番目が難しい部分です。知っていることを書かない判断は、詳しい人ほど抵抗があります。

ただ、判断に不要な情報が多いほど、読者は必要な部分にたどり着きにくくなります。

想定例:専門性が高いのに成果が出ない

考え方を整理するための想定例です。実在する媒体の記録ではありません。

状況

  • 記事の正確さ 高い
  • 扱っている内容 仕組みの詳細が中心
  • 比較や条件の説明 少ない
  • 成果 発生しない

内容に誤りはありません。むしろ、他の媒体より正確です。

ただ、読者が選ぶための情報が不足しています。詳しく知りたい読者には評価されても、選ぼうとしている読者は判断できません。

詳しさが強みになる場面

専門知識は、使いどころを選べば大きな差になります。

これらは、詳しくない人には書けません。しかも、読者の判断に直接関わる内容です。

知識の量ではなく、どの知識を選んで出すかで差がつきます。

初めての読者の視点を取り戻す

詳しくなるほど、自分が最初につまずいた場所を忘れます。意図的に思い出す手順を挟むと、抜けを防げます。

確認の方法

  1. その分野を知らない人に、記事を読んでもらう
  2. 読んでいて止まった箇所を聞く
  3. 説明なしで使っている用語を洗い出す
  4. 検索の候補に出てくる初歩的な疑問を見る

4番目は一人でもできます。検索したときに表示される関連の質問には、初めての人が抱く疑問が現れます。自分では思いつかない切り口が見つかります。

2番目が得られる場合は最も確実です。どこで止まったかは、書いた本人には分からない情報です。

専門性の示し方

詳しいことを伝える方法にも、読者の判断に効く形とそうでない形があります。

専門性が不要という話ではない

ここまで読むと、詳しさは邪魔になるという主張に見えるかもしれません。そうではありません。

正確な情報を書けること、誤りを避けられること、読者の質問に答えられること。これらは媒体の信頼を支えます。調べただけの記事とは、内容の確かさが違います。

問題は「知識の量をそのまま出すこと」であって、専門性そのものではありません。

また、どこまで詳しく書くべきかは読者の段階によって変わります。初めて調べる読者には前提から、検討している読者には比較の材料を。同じ知識でも、出す順序と量を変える必要があります。

その説明は、何を決めるために要るか

書こうとしている内容について、読者がそれを知ると何を決められるようになるかを考えてみてください。

答えられるなら、その説明は必要です。答えられないなら、詳しさとして価値はあっても、判断には使われません。別の記事に分けるか、優先度を下げる判断になります。

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