「次はリーダーをやってみない?」。期待されているのは分かるのに、うれしさより先に、会議が増える予定表を想像してしまう。今の仕事は嫌いではない。むしろ、手を動かしている時間は好きだ。それなのに、上を目指さない自分は、この先どう見られるのだろう。
昇進の話を喜べないと、向上心がないのではと自分を疑うことがあります。でも、役割を広げたい人も、技術を深めたい人も、生活との配分を変えたい人もいます。昇進を望むかどうかと、何かを学び続けたいかどうかは別の問いとして考えてみましょう。
断りたいのは肩書きか、その先の毎日か
まず、昇進した自分の何が嫌なのかを具体的にします。人の予定を管理すること。困ったときの最終確認が集まること。現場から離れること。仕事の時間が広がりそうなこと。肩書きそのものより、想像した仕事の内容に引っかかっている場合があります。
反対に、実際にはどう変わるのか分からないまま、過去に見た上司の働き方を当てはめていることもあります。もし検討する余地があるなら、担当する範囲、期待される行動、支援する人、今の作業がどれくらい残るかを確認します。「責任感がないから無理」と自分だけで結論を出す前に、役割の情報を集めます。
確認した結果、やはり望まないという答えでもかまいません。嫌な予感を無理に克服することが目的ではありません。知らないから怖い部分と、知ったうえで合わない部分を分けるためです。同じ昇進でも、任される仕事は職場によって異なります。
また、今は望まないことと、将来も絶対に望まないことは別です。家族の事情や、取り組みたい仕事がある時期なら、今の条件では難しいという説明もできます。一度の返事で一生の成長の方向まで決めなければならない、と考えすぎなくてよいでしょう。
縦に進まない成長にも、具体的な中身が要る
昇進しない道を選ぶなら、その代わりに何をしたいかを、自分の中で一つ持つと話しやすくなります。「今のままでいい」には、現状の仕事を深めたい意味も、変化から逃げたい意味も混ざるためです。言葉を足すと、自分でも違いが見えます。
たとえば、難しい問い合わせを説明できるようになる。新人が使いやすい資料を作る。作業の抜けを減らす仕組みを試す。これまで触れなかった道具を覚える。どれも人の上に立つこととは違いますが、仕事の幅を広げる行動です。
「昇進はしたくない。でも、これができる人にはなりたい」。その後半を、自分の言葉で持っておく。
大きな資格や目立つ成果でなくてもかまいません。ただ、いつまでも気持ちだけにしないために、完成物やできるようになった行動を残します。説明書を一つ直した、以前は人に頼んでいた作業を自分でできた、という違いが見えれば、自分の成長を肩書きだけで測らずに済みます。
もちろん、職場の給与や評価がどう扱われるかは別に確認が必要です。好きな仕事を深めれば必ず評価される、とは限りません。自分が望む成長と、その会社で認められる役割が重なるかどうかを見ます。重ならないことが分かれば、学びを続ける場所を社外にも探す理由になります。
自分の希望を確かめるために、「役職名を消した予定表」を作ってみる方法もあります。昇進後と今のままの場合を、それぞれ月曜日の朝から書くのです。誰の相談を受け、どんな会議へ出て、何を自分で仕上げるのか。名刺に印刷される言葉を隠すと、肩書きへの憧れや抵抗より、一日の仕事の中身を比べやすくなります。
そこで、今は避けたいと思った業務にも、やってみたい部分が見つかるかもしれません。人の評価を担当するのは望まないけれど、新人への説明会なら工夫してみたい。会議を増やしたくないけれど、手順を見直す打ち合わせには参加したい。全部受けるか全部断るかの間に、相談できる役割がないかを探します。職場側が分けられない場合でも、自分が何に関心を持ったかは残ります。
逆に、予定表を見てやはり望まないと感じたなら、その理由は単なる気分より具体的です。「今の作業を続けたい」「この時間帯は生活へ残したい」。それを言葉にできれば、断る返事も、自分の暮らしを選ぶ説明になります。
期待を拒絶する返事にしない伝え方
昇進を断るとき、期待されることまで嫌だったように聞こえないか心配になるかもしれません。そこで、感謝、今の希望、貢献したいことを分けて伝える方法があります。長い言い訳を作るより、自分が考えた範囲を短く話す方が、次の相談につながります。
たとえば「声をかけていただいたことはありがたく思っています。ただ、今は人の管理より、担当業務の改善に取り組みたいです。この部分なら役割を増やしていきたいと考えています」。これは会話を考えるための例です。勤務先の事情や求められている立場に合わせて、言葉を変えてください。
相手の受け止め方は自分では決められません。だからこそ、あいまいに引き延ばすより、確認したいことと、現時点での希望を分けます。まだ情報が足りないなら、断ると決める前に役割の説明をお願いする。合わないなら、何を担当できるかも話す。この順序で、自分の意思を消さずに相談できます。
職場の評価や配置に関わる話なので、楽に解決すると約束はできません。ただ、「上へ行かないなら何もする気がない」という二つだけの会話にしないために、したい仕事を具体的に持っておく価値はあります。
会社の階段だけで、自分の一生を測らない
職場で長く働いていると、その場所の役職が成長の地図に見えてきます。ところが、社外では違うことが評価されたり、仕事以外の活動で新しい役割を得たりすることもあります。会社の階段に登りたい気持ちがないからといって、地図そのものがなくなるわけではありません。
そこで、仕事外で一つ、自分が決めて完成させるものを持ってみる方法があります。趣味の解説、道具の比較、初めての人への案内など、公開できる題材を選びます。勤務先の情報や他人の成果を借りて見栄えを作るのではなく、自分が調べて説明できる内容にします。
最初は誰からも役職をもらえませんし、完成しても拍手は来ないかもしれません。それでも、どこまで調べ、どんな順番にして、何を出さないかを決める経験はできます。管理する相手がいなくても、自分の企画へ責任を持つという成長の仕方があります。
やってみて会社の仕事の方が合うと分かっても、失敗ではありません。自分で全部決める負担を知れば、今の職場で支えてもらっている部分にも気づけます。独立を目標にせず、自分が何を選ぶと気持ちよく働けるのかを試す時間として使えます。
ただし、新しい活動を始める前には勤務先のルールを確認し、仕事と私的な活動の情報を混ぜないようにします。自分の企画という言葉が、何を使ってもよい理由にはなりません。題材を狭めて、自分で確かめられる範囲から始めます。
説明を育てる仕事と、その収入の仕組み
自分で企画した説明を少しずつ増やす形として、情報サイトの運営があります。一つの記事を終えて次の疑問に答える、読まれ方を見て修正する。人の管理を広げるのではなく、読者へ残す情報を深める形で取り組むこともできます。
そのサイトで他社の商品やサービスを紹介し、広告主の条件に沿った購入や申し込みが承認されたときに報酬を受け取る方法が、アフィリエイトです。商品を自作する以外の事業ですが、記事があるだけでは収入は決まりません。読む人の疑問と紹介するものが合い、読者に来てもらう工夫が必要です。
テーマの企画、サイトの制作、調査、記事や画像の用意、集客、更新まで複数の作業が続きます。専門会社へ依頼する道を検討する場合も、費用と役割、公開後の管理まで比べます。会社で昇進しない分を簡単に埋める収入、と考えず、別の仕事を持つかどうかの話として扱います。
昇進したくない気持ちを、後ろ向きなものと決めなくてよい一方、何も考えない言い訳にする必要もありません。どんな一日を送りたいか、何ができる人になりたいか、どんな形なら責任を持ちたいか。その答えを一つずつ足すと、会社の階段とは別の場所にも、自分の歩く方向が見えてきます。
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