会話が終わってから、言いたかった言葉がきれいに並ぶ。「あのとき、こう言えばよかった」。帰り道の自分は、さっきの席にいた自分より妙に説明が上手だ。頭の中では名回答が完成したのに、肝心の会議はもう終わっている。

その場で話すのが速くないからといって、伝えることそのものが苦手とは限らない。思い出し、並べ、確かめてからなら説明できることがある。会話の速度へ合わせる以外にも、自分の考えを届ける形はある。文章を、立派な才能ではなく、考える時間を置ける道具として使ってみたい。

帰り道の名回答を、一行で捕まえる

会話の後に浮かんだ言葉を、頭の中だけで繰り返していると、翌日には肝心な部分を忘れる。まず一行だけメモしてみよう。相手の言葉を全部再現するのではなく、自分が言いたかったことの芯を書く。「安い物より、片付けられる物を選びたかった」くらいでよい。

ここで最初から文章に整えなくていい。句読点や言い回しを直し始めると、内容より体裁が気になって手が止まる。誰かへ見せる下書きではなく、自分の考えを逃がさないためのメモだ。上手に書くのは、捕まえてからでも間に合う。

次に、何を聞かれた場面だったかを一行添える。自分には分かるつもりでも、後から読むと答えだけが宙に浮くことがある。「机を買い替えた理由を聞かれた」と書けば、後日説明を作るときの入口になる。

何度も思い返して疲れる会話を、全部原稿へ変える必要はない。残したい考えだけ拾えばよい。相手を言い負かす台本を作るより、自分が何を大事にしていたかを分かる形にしておく。その方が次の別の場面でも使いやすい。

一度に話せないことは、問いごとに分ける

文章なら時間があるからと、考えたことを全部入れると読みにくくなる。話すのが速い人へ追いつこうとして、文章まで早口にする必要はない。まず、答えたい問いを一つだけ決めてみよう。

例えば、「この道具は使いやすいか」では広すぎるなら、「片手で出せるか」「使った後どこへ置くか」に分ける。一つの問いに一つの場面を合わせると、具体的な説明になる。何を言うか迷ったら、相手が最初に困るところから並べてみる。

短い文章の順番は、結論、理由、場面、合わない場合と置いてもよい。ただし、どの文章も機械的に同じ形へ押し込む必要はない。失敗した場面から始めた方が伝わることもあるし、比べる条件を先に示した方が迷わないこともある。

大切なのは、自分の頭に浮かんだ順ではなく、読む人が理解する順に直すことだ。会話ではその場で難しくても、文章なら一段落を移せる。話し終えてから気づいた説明を、話し始める前へ置けるのが便利なところである。

うまい言葉より、そこにあった動きを書く

説明を分かりやすくしようとすると、立派な言葉を探したくなる。「効率がよい」「負担が少ない」「使いやすい」。便利な表現だが、何が起きたかは伝わりにくい。そこで、自分が見た動きや困った瞬間を一つ足してみる。

「この箱は片付けやすい」なら、「机の上の小物をまとめて持ち上げ、そのまま棚へ入れられる」と書く。「比較に時間がかかった」なら、「幅の数字は見ていたのに、扉を開ける場所を測っていなかった」。文章が長くても、読む人の頭に場面ができれば伝わりやすい。

会話の上手な人のように、面白い例えを毎回ひねる必要もない。台所、駅、机、買い物。自分の説明に合う普通の場面で十分だ。面白くしようとして、本当は起きていない体験を実話風に足すより、事実として分かる範囲を具体的に書きたい。

専門的な言葉で止まりやすい場合には、専門用語を使わず説明する方法も役立つ。この記事では言葉の置き換えより、自分の考えを一度外へ出して並べ直すことを扱っている。難しい言葉を消す作業と、話の順番を整える作業は分けて行える。

書き始めの文章は、発表する原稿でなくてよい。まず、自分が何を言おうとしているかを、自分にも見える場所へ出す。

文章にも、相手が考える間を作る

自分は話すのが遅いと感じているのに、書くと一文が長くなることもある。言い忘れを防ごうとして、理由も例外も補足も一度につなぐからだ。一息で全部を言う必要がないのに、文章だけが息を止めて走っている。

一度書いたら、声に出さなくてもよいので、自分が初めて読むつもりで追ってみる。何についての話かが分からなくなる場所、主語が遠いところ、同じことを言い直しているところを探す。文章を短くするためというより、読む人の迷子を減らすために区切る。

段落の最初へ、何の話をするかを置くと読みやすくなる。「置き場所について」「使った後の片付けは」のような短い言葉でもよい。相手に、今どの話をしているかの札を渡す。ゆっくり考える人だからこそ、読み手が止まれる場所を作ることもできる。

人へ見せるなら、直してほしい点を一つ頼む。「変な文章じゃない?」と聞くより、「何を選びたい人の話か伝わる?」と尋ねる。相手が速く読んでも、何につまずいたかが分かれば修正できる。評価より、伝わった中身を確認する会話へ変えてみよう。

削る作業が苦手なら、下書きを残したまま別の紙へ要点を書き直してみる。全部消してしまうのが惜しいと、一文へ情報を詰め込みやすい。元の考えを保管しておけば、読者へ見せる文章は短くできる。余った説明は、必要な問いが出たときに別の一枚へ使えばよい。

見出しだけを並べて読むのも一つの方法だ。最初は机の選び方だったのに、途中から引っ越しの愚痴になっていないか。話したかったことが多いほど、脇道も増える。脇道が悪いのではなく、今回は通らないと決めるだけである。

書く時間が短い日は、完成した文章を増やすより、問いのメモを一つ増やして終えてよい。考えたことを失わない仕組みがあれば、次に座ったときの入口が残る。

次の会話には、短い紙を一枚連れていく

文章ができたら、それをネットへ公開しなければならないわけではない。会議や相談の前に、自分のための短い紙として使える。言いたいこと、相手へ聞きたいこと、まだ決めていないこと。この三つがあると、その場で考える量を減らせる。

話し始める前に「順番に説明したいので、メモを見てもいいですか」と伝えてもよい。全部暗記してから話すことだけが準備ではない。言葉が遅れたときに戻る場所がある方が、自分の話を見失いにくい。

会話の後に説明が足りなかったと気づいたら、必要な相手へ短い補足を伝える方法もある。その場で言えなかったから全部失敗とせず、後から渡せる情報がないか考える。口頭と文章は競争相手ではなく、別々の場面で助け合える道具だ。

説明がたまったら、探して読む場所を持つ

一つずつ問いへ答える文章がたまれば、身近な人以外へ届けることも考えられる。自分が有名になるためというより、同じ場面で困る人が後から見つける案内として残す。読者がどこから来るかは、ブログの見つけられ方で確認できる。

商品を選ぶ説明なら、紹介した他社の商品やサービスへの購入・申込が条件を満たして承認されると報酬を得る、アフィリエイトという仕組みもある。詳しくは基本の解説を読める。ただし、文章が書けることと収益が出ることは別で、サイト制作、集客、更新も必要だ。企画や制作を専門会社へ依頼する方法を含め、自分が関わる作業を理解して考えたい。

最初から事業の文章を書こうとしなくてもよい。今日の帰り道に浮かんだ、あの一言を残してみる。昨日は会話へ間に合わなかった考えが、明日の誰かにはちょうどよい速さで届くこともある。話す速さだけで、自分の説明の価値を決めなくていい。

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