仕事の集まりなら、自己紹介は簡単です。会社名、部署、名前。この順番で言えば、相手も何となく立ち位置を分かってくれる。ところが、地域の集まりや趣味の場で「普段、何をしているんですか」と聞かれると、急に言葉が減ってしまう。
会社の説明はできるけれど、自分の説明は難しい。これは、会社にしか価値がないという意味ではありません。いつも使っている名札を外したとき、別の紹介の仕方をまだ用意していないだけかもしれません。立派な肩書きを作り直す前に、最近している小さな活動から考えてみましょう。
会社名は便利な地図。でも、自分そのものではない
会社名や役職には、説明を短くしてくれる働きがあります。どんな業界にいて、誰と仕事をする人なのか、相手が想像しやすい。だから、それを使うこと自体が悪いわけではありません。仕事の場で必要なら、もちろん伝えてよいものです。
ただ、それ以外の場所でも同じ地図だけを使うと、伝わらない部分が出てきます。会社を知らない人には名前だけでは分からないし、仕事以外の関心も見えません。会社の看板が大きいほど、その陰で、自分が何に時間を使っているかを話す練習をしなくなることもあります。
反対に、無理に会社名を隠して、自分だけで勝負しなければと力む必要もありません。看板を捨てる儀式ではなく、紹介の引き出しを一つ増やすつもりで考えます。「仕事ではこういうことをしていて、最近はこんなことも調べています」。それくらいのつなぎ方で構いません。
肩書きの代わりに、動詞を一つ置いてみる
自分を紹介する言葉が見つからないと、資格や職種の名前を探したくなります。でも名詞を増やす前に、何をしているかを動詞で書いてみる方法があります。調べる、比べる、作る、直す、まとめる。実際に行っている動作なら、今の自分から遠くなりません。
「旅行好きです」だけでも会話は始まりますが、「大人数で行く旅行の候補を調べて、比較する表を作っています」なら、どんな時間を過ごしているかが見えます。「家電に興味があります」を、「狭い部屋に置ける道具を、寸法と片付けやすさで調べています」に変えてもよいでしょう。
これらは自己紹介の言い方の例で、実績を大きく見せる表現ではありません。実際にやっていないことは足さないようにします。まだ調べ始めたところなら、そう言えばよいのです。「詳しい人」という役を引き受けなくても、「これを確かめている人」として話せます。
誰のためかを足すと、話が具体的になる
動詞が決まったら、次は相手を一人思い浮かべます。誰のために調べたり、作ったりしているのでしょうか。自分のためでも構いません。以前の自分と同じ条件で困っている人へ伝えるなら、どんな人になるかを考えます。
「暮らしに役立つ情報を発信しています」では、守備範囲が広すぎて、会話が次へ進みにくいことがあります。「初めて一人暮らしをする人が、買い物で困らないように比較しています」なら、何を聞けばよいか相手も分かります。何でも知っていそうに見せるより、具体的な入口を作れます。
人の役に立つためと大きく構える必要もありません。友人へ一度説明したことを、次は読み返せるように残している。その程度の活動でも、やっていることを言葉にすれば紹介になります。社会的に大きな意味を付けるより、誰が読んだら迷いが一つ減るかを考えます。
- 何をしているか。
- どんな人が困る場面を考えているか。
- 今、何を一つ作っているか。
この三つを一文へ全部詰め込む必要はありません。まず短く話して、相手が興味を持ったら具体例を一つ足す。自己紹介は、完成した経歴を発表する舞台というより、会話の取っ手を渡す時間だと思うと、少し力が抜けます。
言葉を考えるだけでなく、小さな見本を作る
何をしているか説明したくても、まだ何も形になっていないと、言葉がふわふわします。そこで、自分で選んだ疑問への案内を一つ作ってみます。買い物の比較、使い方の確認、準備する順番。完成したページやメモがあれば、それを指しながら話せます。
見本は、豪華である必要はありません。読んだ人が何の話か分かり、確認することを一つ選べる形にします。写真や図を使うなら、自分で用意した物や利用できる素材に限り、勤務先の資料を移しただけの見本にはしません。自分の活動と会社の仕事を混同させないためにも、材料を分けます。
出来上がった後は、説明を一つ試すだけでも十分です。「これを読んで何をする話だと思った?」と聞けば、伝わった部分と足りない部分が見えます。初めから絶賛される作品を目指すより、説明を一回使ってみるつもりで作ります。
新しい肩書きを名乗れなくても、「今、これを作っています」と言えるものは持てます。自己紹介を支えるのは、名刺の文字数だけではありません。
自分の活動を話すことと、売り込むことは分けていい
活動を説明すると、何かを買ってもらう話に聞こえるのではと心配する人もいます。そんなときは、相談したいことと、相手へ頼んでいることを分けて伝えます。見てもらいたいのか、感想が欲しいのか、ただ近況を話しているのか。相手に役割を推測させないようにします。
「見てください」と言った後に、登録や購入のお願いが続くと、聞き手は構えやすくなります。最初は無理に何かをしてもらわず、聞かれたことへ答えるだけでも構いません。興味を持たれなかったからといって、その活動が全部無価値になるわけではありません。相手と話題が合わない日もあります。
また、話す場所によって、出す情報を変えてよいのです。会社名を伝える場もあれば、趣味だけ話す場もある。全員へ同じ自己紹介をしなければという決まりはありません。実名で発信するかどうかも、活動の目的や自分の条件を見て選びます。
紹介の言葉は、完成してから使うものとは限らない
「今は試しに一ページ作っているところです」と言うと、まだ何者でもない気がするかもしれません。でも、途中の状態をそのまま話せると、相手も聞きやすくなります。大きな肩書きを出した後で実績を証明し続けるより、次に何を試すかを話す会話にできます。
一方、毎回違う活動名を名乗って落ち着かないなら、対象の疑問を一つに戻します。自分がどんな人かを一度で決める必要はなく、今取り組んでいることを説明できればよいのです。何を作ったかが増えたら、自己紹介の言葉も少しずつ直していきましょう。
自分の説明がたまってきたら、サイトという場所もある
同じテーマの案内が増えたら、Webサイトにまとめる方法があります。何を考え、どんな疑問へ答えているかを、人が後から読める場所です。会社を離れても全部が消える名刺ではなく、自分の企画として更新する内容を持つ。そのための一つの形です。
商品やサービス選びを支える情報なら、他社商品を紹介し、購入や申し込みなどの成果が承認されると報酬を得るアフィリエイトという事業の選択肢もあります。自分の商品を持つ方法とは異なりますが、紹介するサイトの企画、制作、集客、情報更新が必要です。
全部を自分で進めるか、専門会社へ任せる部分を作るかは、その作業と費用を見て考えます。自己紹介が苦手だからサイトを持てば解決する、という話ではありません。ただ、自分で選んだ問いと、それに答える文章があると、何をしている人かを説明する材料が増えます。
次に会社名のない自己紹介をする機会が来たら、最近、時間をかけて調べたことを一つだけ話してみてください。大きな実績を添えなくても構いません。何に目を向けて、誰のどんな疑問を考えているか。その一言から、会社の紹介とは少し違う会話が始まるかもしれません。
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