面接が終わって駅へ向かう途中、言えばよかったことが次々に出てくる。「あの質問には、こう答えればよかった」。家へ着く頃には立派な受け答えが完成しているのに、本番では言葉が出なかった。帰り道の自分だけ、ずいぶん口が達者です。
そのたびに、話せる実績がないからだと落ち込む必要はありません。経験を思い出す作業と、相手へ短く話す作業を、同時にしようとして難しくなっているのかもしれません。ここでは面接の必勝法ではなく、口から出なかった仕事の話を、いったん文章へ置いてみる方法を考えます。
「強みを教えてください」で、頭が白くなる理由
普段の仕事では、自分の強みを名詞にして言う機会はあまりありません。目の前の問い合わせへ答え、確認して、次へ渡す。行動はしていても、そのたびに「これは調整力です」と名前を付けているわけではないでしょう。いきなり聞かれて、整理できていなくても不思議ではありません。
しかも面接では、相手の表情や時間を気にします。長すぎるだろうか、自慢に聞こえないだろうか。考えているうちに、具体的な記憶がどこかへ行ってしまう。だから、話す前に一度書いてみる意味があります。文章なら、途中で戻っても、少し黙っていても構いません。
きれいな自己PRを書こうとする前に、仕事の一場面を思い出します。問題が起きた日、誰かに頼まれた作業、初めて任された担当。評価の言葉を入れず、何が起きて、自分が何をしたかを順に置きます。形容詞より動詞を集めるつもりで書くと、記憶を取り出しやすくなります。
最初は、面接で話すには長すぎる文章でいい
一分で話す練習から始めると、残すべき内容が見つからないまま削ることになります。最初は長く書きます。何を頼まれたのか、最初に何が分からなかったか、誰へ確認したか、どこでやり直したか。成功した部分だけにせず、迷ったところまで含めます。
例えば「新人へ教えていました」なら、何をどう教えたかを足します。最初は自分と同じ順番で説明したけれど、前提が違って伝わらなかった。そこで、使う言葉を変え、作業の終わった状態を先に見せた。こうして書くと、「教えた」という一言の中に隠れていた行動が現れます。
もちろん、これは文章化の例で、特定の人の実績ではありません。自分の話を書くときも、成果をよく見せるために事実を足さないようにします。数字が分からなければ、無理に何割改善と書かず、何を変えたかを説明する。チームの成果なら、自分の担当範囲を分けます。
読み返すとき、自分へ四つだけ質問する
書けた原稿へ、四つの質問を付けます。「誰が困っていたか」「何を確かめたか」「自分は何を変えたか」「変えた理由は何か」。この四つに答える箇所へ線を引くと、話の骨になる部分が見えてきます。すごい話かどうかを採点するより、相手が状況を想像できるかを見ます。
- 誰が困っていたかがないと、行動の目的が分からない。
- 何を確かめたかがないと、判断の根拠が分からない。
- 自分の行動がないと、担当した内容が分からない。
- 理由がないと、偶然そうしたのか、考えて選んだのか分からない。
足りないところを補ったら、今度は面接で伝える部分を短くします。書いた文章全部を暗記するのではなく、場面、行動、理由という順番を持っておく。覚える文が少なくなれば、途中で言い回しを忘れても、話の続きへ戻りやすくなります。
ただし、文章でうまく整理できたから、面接で必ず評価されるわけではありません。相手が求める経験や条件もあります。書く作業の目的は、選考の結果を約束することではなく、少なくとも自分が何をしてきたかを、自分で見失わないようにすることです。
書いたら、思ったより地味だった。それでも残す
文章にしても、大きな成果にならないことがあります。複雑な資料を見やすく並べた、相手の話を聞き直した、使う前の準備をそろえた。そんな話では弱いと感じるかもしれません。でも、それが誰のどんな手間を減らしたかまで書けば、読む人には役割が伝わります。
地味な経験を壮大な物語へ変える必要はありません。むしろ、聞かれたときに具体的に説明できるほうが安心です。やっていないことを付け足した文章は、次の質問へ答えるときに自分を困らせます。飾る前に、一つの場面を最後まで説明できるようにします。
また、文章の中へ前の職場への不満が多く出る場合もあります。それ自体を責めず、気持ちを書くメモと、人へ伝える経験の説明を分けてみます。嫌だったことの中にも、次はどんな条件で働きたいかを知る材料があります。ただ、公開する文章へ他人の事情や内部情報をそのまま載せないようにします。
帰り道で思いついた答えは、遅すぎた答えとは限りません。次に使えるよう、一度文章にしておく。自分の経験を、緊張した数十分だけで採点しないために。
その文章は、面接以外でも使えるかもしれない
仕事の経験を書き出すと、誰かが同じことで困っている場面が見えることがあります。初めて担当する人へ、確認する順番を伝えられる。道具を選ぶ人へ、使う場所から考える視点を渡せる。自分の職歴を説明するためのメモが、他の人への案内に変わる可能性があります。
ここで、いきなり発信者として大きく成功しようとしなくても構いません。一つの疑問に答える文章を作り、専門用語を知らない人にも伝わるか確かめるだけでも、面接用の原稿とは違う手応えがあります。相手へ説明するために書くと、自分の経歴をよく見せることより、相手が先へ進めることへ意識が向きます。
もし同じテーマの疑問がいくつもあるなら、Webサイトにまとめる方法もあります。仕事探しと別に、自分が説明できるテーマを残す場所です。勤務先の資料をコピーするのではなく、公開できる情報を自分の言葉で書き、変わる情報は確認して更新します。
家で声に出すときは、全文の暗記をしない
書いた内容を話す練習に使うなら、全文ではなく見出しだけを手元に置いてみます。「最初の状況」「確認したこと」「変えたこと」の三つを順に話し、詰まったところだけ文章へ戻ります。言葉を一語間違えたら全部やり直す方法では、覚えること自体が仕事になってしまいます。
一度話して長かったなら、背景の説明を短くし、自分の行動を残します。短くするたびに意味が消える部分は、まだ具体化が足りないのかもしれません。原稿を書くことと話すことを行き来すると、自分がどの場面を伝えたいのかも少しずつ定まってきます。
商品を持たなくても、情報を事業にする道はある
商品やサービスを選ぶ人へ情報を届けるサイトでは、他社の商品を紹介し、購入・申し込みなどの成果が承認されると報酬を得るアフィリエイトという仕組みもあります。自分で商品を開発する以外にも、サイトを事業として持つ方法がある、という選択肢です。
ただし、文章が書けることと、収益を生むアフィリエイトサイトを運営できることは同じではありません。紹介できる案件の調査、検索する人を想定した企画、サイト制作、記事制作、集客、更新などが必要です。転職の代わりにすぐ収入を作れる話としては考えず、費用と作業を見て検討します。
全部を自分で担う方法もあれば、企画や制作を専門会社へ依頼する方法もあります。その比較をする前に、自分が何を説明できるかを知っておくことは無駄になりません。面接のために整理した経験が、別の場面で役立つ材料になることもあります。
まずは、前回話せなかったことを一つだけ、帰り道で考えたまま書いてみてください。うまい表現に直すのは後で構いません。誰が何で困り、自分がどう関わったか。その一場面を残せれば、緊張して黙ってしまった自分の中にも、話せる内容があったと分かります。
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