AIで資料を作る仕事は、文章や図の生成を売るだけでは成立しにくいものです。依頼者が実際の商談や会議で使えるように、資料の用途、根拠の確認、編集形式、修正の扱いまで決めて納品します。見た目を整える仕事と、提案内容を考える仕事を分けると、引き受ける責任と料金を説明しやすくなります。

「営業資料を作ってほしい」の中身を分ける

既にある原稿をスライドにする依頼と、商品情報から提案を組み立てる依頼では、必要な時間も確認者も異なります。前者はレイアウトや読みやすさが中心です。後者には、誰へ何を提案するか、競合との違いを何で裏づけるかという判断が含まれます。両者を一つの「資料作成」として受けると、納品直前に内容の作り直しが生じます。

最初に聞くのはページ数ではなく、使う場面です。初回の説明に使うのか、比較検討中の相手へ送るのか、社内で予算を申請するのか。それによって読み手が知りたいことが変わります。説明者が口頭で補う資料なら短い見出しが使えても、単独でメール送付する資料には条件や前提の記載が必要です。

依頼の種類作業の中心事前に必要な情報
既存資料の整形配置、図表、表記の統一確定原稿と変更してよい箇所
説明の組み直し順序、読み手別の説明量対象者と説明の目的
提案内容の制作課題と提供価値の接続商品条件、顧客事情、根拠
外部情報の調査事実確認と出典整理対象、確認範囲、基準日

調査まで必要なら、AI調査代行の納品範囲を別工程として見積もります。AIが作った説明をそのまま事実として採用するのではなく、支給情報と新たに調べた情報を区別してください。

仮定例:同じ十枚でも仕事は変わる

仮定として、設備会社から十枚の営業資料を依頼されたとします。商品説明と価格が確定している場合、主な作業は構成整理と図表化です。ところが「なぜ導入すべきかも考えてほしい」となると、相手企業の現状、導入条件、費用の根拠を確認する仕事が増えます。ページ数が同じでも、内容制作を含む方が単純に短時間とは限りません。

「導入すると三割削減」といった効果をAIが提案しても、根拠がなければ資料へ載せられません。試算を示すなら、依頼者から対象数値と計算条件を受け取り、仮定であることが読み手にも伝わる形式にします。制作側が勝手に数値を置くと、見栄えのよい資料が営業上の誤解を生むことがあります。

この案件では、制作側が文章の構成案を作り、依頼者が商品条件と説明の妥当性を確認する、と担当を分けられます。商品を知らない人へ丸ごと任せるより、確認できる情報を支給する方が内容を固めやすくなります。依頼内容を具体化する考え方は発注設計に必要な情報でも整理しています。

AIを使う場所と人が止める場所

  1. 支給資料を分類し、不足している情報を一覧にする。
  2. 読み手と使用場面に合わせて構成案を出す。
  3. 構成と事実関係を依頼者へ確認してもらう。
  4. 文章、図表、レイアウトを制作する。
  5. 数字、固有名詞、引用、表示崩れを点検して納品する。

AIは構成候補や文章の短縮案を作る補助に使えますが、支給資料の意味を取り違えていないかは確認が必要です。数値の単位、対象期間、比較条件を落とすと、文章が自然でも内容が変わります。図表にした際も、元データと軸や比率を照合します。AIを使用したことより、どの箇所をどの根拠で確認したかを説明できることが重要です。

社外秘の提案や顧客情報を扱う場合は、入力可能な範囲を確認してから作業します。氏名を消すだけで、すべての情報が入力可能になるとは限りません。顧客との契約、利用サービスの条件、情報管理の方針を合わせて判断します。基本となる確認項目はAIツールへの入力と利用条件へ渡せます。

納品形式は編集する人から決める

完成したPDFだけでよいのか、依頼者が価格や商品名を書き換える必要があるのかを先に聞きます。編集可能なファイルを渡す場合、使用ソフト、フォント、図の扱い、外部素材の利用条件まで決めます。制作側の環境で開けても、顧客の環境で同じように表示されるとは限りません。最初に一枚だけ確認用に渡す方法もあります。

読み手へ配布する版と、説明者が使う版を分けるなら、その数も見積もりに含めます。画面での読みやすさ、印刷時の視認性、発表時の文字量は同じ基準にはできません。配色を変えるだけでなく、資料の目的ごとに情報量を調整する必要があります。複数版の制作を一枚の修正として扱わないことが採算管理にもつながります。

納品一覧には、ファイル名、版、用途、編集可能な箇所、含まれない作業を書きます。素材を別途渡すなら、再利用できるものと利用範囲の制限があるものを分けます。一般的な見積書の読み方は納品物と別料金の確認も参考になりますが、資料受託では発表用、配布用、編集用の違いまで明記します。

修正を「何でも対応」にしない

修正は、誤字や指示との不一致を直すものと、顧客の方針変更で作り直すものに分けます。構成承認後に対象顧客が変わった場合は、表現の微調整だけでは済まないことがあります。どこまで基本料金に含め、どの変更から再見積もりするかを契約前に説明してください。細かな文字修正だけでなく、承認した構成や支給情報の変更も基準にします。

窓口が複数ある案件では、営業担当、上司、経営者から別々の指示が届くことがあります。顧客側で意見をまとめる人と、制作側へ最終確認を返す人を決めます。決裁待ちの日数を制作日数に混ぜず、返答予定を納期に含めてください。修正回数と料金の設計へ進むと、作業の増え方を見積もれます。

資料の完成と営業成果を分けて約束する

初稿を見せる順番にも意味があります。デザインまで完成させてから内容を確認すると、構成が変わった際に多くのページを作り直すことになります。最初は見出しと各ページの要点だけを共有し、次に数字や図の素案、最後に整形した資料を見せる方法を取れます。顧客にとっても、内容の判断と好みの判断を一度に求められるより確認しやすくなります。

確認の依頼には、今回見てほしい項目を書き添えます。「商品条件は合っているか」「この順序で説明するか」「配布してよい情報か」などを具体化してください。何となく問題ないという返答だけでは、後で内容が未承認だったと分かることがあります。確認結果と版を対応させて保存し、変更があった場合には影響するページを示します。

完成後に内容を一部変更すると、文章だけでなく図の数字や注記も直す必要がある場合があります。修正箇所の一覧を作り、関連するページを横断して確認します。短い資料だから確認を省けると考えず、最終版としてどのファイルを配布するのかを顧客と揃えてから作業を閉じます。

検収では、決めた情報が入っている、根拠の記載がある、指定環境で表示される、必要な形式が揃っていることを確認します。商談の成立は、相手の予算や商品条件、担当者の提案などにも左右されます。資料制作の契約だけで、受注増加を確約することはできません。顧客が期待する結果を聞いたうえで、そのために制作側が担う具体的な作業へ置き換えます。

使われた後の反応を聞く場合も、改善作業を無期限に含めないようにします。閲覧者が迷った説明を一回整理する、次の商談用に一部を改訂するなど、追加の納品物を決めます。資料制作に向くのは、内容を確認できる顧客と、用途を限定して仕事を進められる人です。商品情報が一切なく、効果の数字まで制作側へ任せる案件は、見積もる前に条件を整える必要があります。