契約の予定が積み上がっていても、その合計額を自由に使えるお金として扱うのは早計です。提供を終えてから請求する契約、途中で終了できる契約、利用量で金額が変わる契約では、将来の入金が変わります。ストック事業の判断では、見込みの契約額を、提供条件・請求条件・支払いの時期へ分解して確認しましょう。
契約額を聞いたら、まず対象期間を確かめる
「今後の契約がこれだけある」という説明を受けたら、何か月分を合計した数字かを聞きます。月額の契約を一年分足したものなのか、すでに発注を受けて未提供のものなのか、更新されることを想定した見込みなのかでは、数字の意味が違います。同じ名称でまとめられていても、同じ確かさではありません。
本記事の契約残高という言葉は、将来の提供や請求に関する契約額を確認するために使っています。統一した会計上の定義を示すものではありません。事業の資料にその言葉が出てきた場合は、作成者が何を集計したか、どの契約を除いたかまで確かめてください。
人数と金額にも違いがあります。契約者が多くても、短期間で終了する小口契約が中心かもしれません。逆に大きな契約が少数ある場合は、一社の終了で見込みが大きく変わります。合計額のほかに、契約者数、期間、相手先ごとの比率を並べると依存関係が見えます。
契約から入金までを四つの欄に分ける
| 確認する欄 | 残す情報 | 合計だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 約束した提供 | 対象、期間、納品・利用条件 | まだ必要な作業がどれだけあるか |
| 請求できる条件 | 開始、提供完了、確認などの条件 | 契約しただけで請求できるか |
| 金額が変わる条件 | 利用量、追加対応、終了時の扱い | 月額が常に同じか |
| 支払い予定 | 請求日、支払期日、実際の入金 | 支出する前にお金が入るか |
契約書だけでなく、発注書、提供範囲の資料、変更の合意も合わせて確認します。営業資料には一年の予定額があっても、相手と合意した提供期間が三か月なら、その違いを消さないことが必要です。担当者の期待を契約の確定事項へ書き換えないようにします。
毎月の定期サービスなら、請求するための作業が今後も続く場合があります。予定額を大きく見せるために期間を延ばして集計しても、提供の原価まで増えます。契約の合計と、残っている提供時間・外注費・利用費を同じ期間で並べてください。
利用量で料金が変わる場合には、最低額、現在の利用から見た見込み、上限の想定を分けます。最大利用時の売上だけを示すと、相手が使わなかった場合の差を読み取れません。契約に最低額があるかどうかも含めて、数字の根拠を記載します。
途中終了できる契約を、続く前提で使い切らない
将来の収入を考えるときは、途中終了の条件を確認します。終了を申し出られる時期、通知の方法、終了までの提供、すでに払った料金の扱いなどは、個別の合意で異なります。一律に返金できる、できないと判断せず、自分の契約に何が書かれているかを見ます。
自動更新の表示があっても、更新が必ず続くことを意味しません。相手が次の期間も利用したいと思う理由があるか、更新判断の前に誰がどんな情報を確認するかを調べます。契約の仕組みと、相手が継続したいと感じる提供価値の両方が必要です。
ここで避けたいのは、契約見込みに合わせて先に固定費を増やすことです。長期のツール契約や人員の増加を決めた後で顧客が減ると、支出だけが残る場合があります。期間の短い顧客契約と、期間の長い支出契約を並べ、終了時にどの費用が残るかを確認します。
架空の保守契約を、支払い予定へ置き換える
架空の例として、五社が月額の保守を利用し、営業資料では今後十二か月の料金を足しているとします。五社のうち二社は三か月後に利用を見直し、一社は利用量によって料金が変わる契約だとします。十二か月分の総額だけでは、どこまで条件がそろっているかを判断できません。
この場合、五社それぞれの現在の提供期間を書きます。次に、継続の合意が必要な月と、料金の算定が必要な月へ印を付けます。現在の合意に基づく予定と、更新を仮定した予定を分ければ、収入を見込める理由が伝わります。仮定に基づく数字は、確定した数字として説明しません。
さらに外注の保守費とツールの請求日を入れます。顧客への請求が提供後で、外注費の支払いが先なら、その間の資金が必要です。予定の利益が出ていても、実際の支払いを賄えないことはあり得ます。制作と回収のずれについては、収入が出るまでの期間の考え方で扱っています。
この例は契約の評価手順を示すためのものです。実際の継続率や業界相場ではありません。自分の契約を並べる場合は、営業担当の記憶ではなく、相手と合意した内容を根拠にします。変更を受け付けた際にも、いつの予定表へ反映したかを記録してください。
支払いが遅れたときは、別の問題として調べる
提供が済んだのに入金がない場合、契約の継続とは別に、請求と支払いの状況を調べます。請求書の送付先が違う、相手の確認が終わっていない、請求内容への質問があるなど、原因が同じとは限りません。入金がなかったという事実だけで、顧客が離れたと決めつけないようにします。
確認の記録には、請求した日、期日、連絡した相手、返答、次の対応を残します。誰かが連絡したはずという状態では、入金の予定を更新できません。個別の支払い問題については、契約と具体的な事実に基づいて担当者や専門家へ相談する範囲を決めます。
予定を更新するときも、遅れた額を無条件に翌月へ繰り越して売上予測を整えないようにします。いつ入るか未確認なら、そのまま未確認の欄へ置きます。確かでない入金を前提に次の支払いを約束すると、別の契約まで維持しにくくなります。
毎月の確認会で使う資料は三枚でよい
新しい受注と既存の更新を別々に記録すると、契約の増加の内訳も分かります。新規受注が多くても既存の終了が続けば、次の期間の提供量は増えないかもしれません。件数と金額の両方を確認し、受注担当にだけ追加獲得を求める前に、既存顧客が継続しない理由を調べます。
一枚目は契約ごとの提供期間と変更条件、二枚目は請求と入金、三枚目はその契約を続けるための支出です。全体の合計を最初に作るよりも、差が生じた理由を説明しやすくなります。契約を増やす担当と、提供する担当、支払いを管理する担当が同じ資料を確認します。
毎月の会議では、金額の増減に加えて、条件が未確認の契約を取り上げます。更新の返答がまだない、作業量が予定を超えた、提供内容を変更する相談が来た、といった事項です。契約残高の数字が変わる前に、対応できることがあります。
比較する収入源が定期契約ではない場合は、この管理表をそのまま当てはめないでください。教材の繰り返し販売や、成果報酬型の広告掲載では、将来の買い手や成果が決まっていないことがあります。違いは契約継続と繰り返し販売の比較で確認できます。
他社商品を紹介する事業も、自社の顧客契約を積む方式とは異なります。報酬が生まれる条件を知るには、アフィリエイトの仕組みを参照してください。事業全体の提供と収入の関係を整理する際は、ストック型ビジネスの継続理由と維持業務も役立ちます。
契約額が大きくなったときほど、使える資金が同じ割合で増えたと考えず、提供が残る期間を確認します。相手先の増加に見合う対応能力があるかも評価してください。契約の積み上げを目標にするだけでなく、提供を続け、約束した条件で入金を受けるところまでを事業の予定に含めましょう。